カルラディア帝国戦記 プロローグ後編


 あの日の事は今でも昨日の事のように覚えている…

いや、忘れてはならない記憶だ

あの日私は、いつもの様に殿下と「交渉の成果」について話をしていた…

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「全く、あの石頭どもには困ったものだ」
「そうぼやくな、ロドルフ」

その日の業務も終わりを迎え、殿下を送り届ける帰り道、私はその日の保守派への説得の愚痴を漏らしていた。

「しかし殿下、彼らは!」
「言うな。我らが愚痴を言ったところで何も変わらないだろう?」
「それはそうですが…」
「根気強く交渉を続ければ、彼らもいずれ理解を示すさ」
「そうでしょうか?」
「そうさ。事実、すでにセカンドオーダーの6割が我らに理解を示し賛同してくれている。これこそ、”根気強い交渉”の成果だろう?」
「確かにそうですね…。どうやら、頭に血が上っていたようです」

そんな話をすると、ふと殿下が私にある”約束”を持ち掛けてきた。

「ロドルフ、私は後数年で公位を継ぐ」
「存じております」
「その時もお前は、私の傍にいてくれるか?」

少し不安げに殿下が問いかけてきたことを覚えている

「無論です。私はあなたに忠誠を誓った身。どこまでもお供しますとも」
「そうか…、それが聞けて良かった。…、ロドルフ、私は一つ約束しよう」

「私は、”民に寄り添った政治”を行う」

突然どうしたのかと思った。何しろ当時のエーリク大公は、十分すぎるほど民に寄り添っていたからだ。
だからこそ、私は聞いたのだと思う

「今も十分民に寄り添っていると思いますが…?」
「あぁ、確かに寄り添っているように思うよ。1等臣民には」
「では、殿下は…」
「あぁ、私は1等臣民だとか2等臣民なんてくだらないとさえ思っている。だからこそ、臣民の区別なくガミラスの民が皆平等で、平穏に過ごせる世界を作りたいのだ!そのためにこそ”民に寄り添った政治”を行うのだ」

目が覚める思いだった。確かに殿下の言う通り、我ら青い肌の1等臣民はエーリク大公の政策によって、これまで以上に平穏に過ごせていた。しかし併合地域の2等臣民等への待遇は、確かによくない。それらをも救おうというマティウス殿下は、やはり”王の器”なのだろうとさえ思った。

だがその直後、事態は一転した
我らが話に花を咲かせているときに、割って入ってきた者がいたのだ
あの時、私がもっと早く気づけていれば……

「マティウス・デスラーだな」

唐突に名前を呼びつけた男は、フードを目深に被り、いかにも怪しい雰囲気を醸していた。

「何者だ!」

ふと嫌な予感がして、殿下をお守りしようとしたその瞬間

「天誅‼」

男がそう叫ぶと同時に、懐に隠していた銃を3発、殿下に撃ち込んだ
無論庇いに走ったが、人が銃弾に勝てるわけもなく、殿下はその場に倒れ伏した
紫の血を流しながら…

男は私にも銃を向け、殺そうとした。しかし寸でのところで警察が到着し、男は走り去っていった。
後から分かったことなのだが、殿下を撃った男は、大公国軍の中でも指折りの保守過激派の人物だったそうだ。
すぐに来た警察は、偶然付近を警らしていた者たちで、不審な破裂音を聞きつけ駆けつけたそうだ。
しかし、殿下には遅すぎた。殿下はその場で、息を引き取っていたのだ…

その日、次期大公であったマティウス・デスラーは、26歳という若さでその生涯を終えた。
奥方と、お腹にいるお子を残して……

時に2184年、春の出来事であった…

そこからのガミラスは明らかにおかしくなってしまった……
マティウス殿下の葬儀の日、まるで示し合わせた彼の様に軍部・政財界、そしてセカンドオーダーの保守派達が合流し、一つのコミュニティを形成、1週間と経たないうちに保守過激派、純血過激派が政権内部に浸透するようになった…

マスメディアに圧力があったのかはわからないが、それぞれのメディアはこれらの出来事を好意的に報じ、やがて臣民も疑問を抱かなくなっていた。

しかしこれは明らかにおかしい!軍部政治、極右政治に国が舵を取り始める前に何とか修正できないか模索したが、それもかなわず…
果てはセカンドオーダーの融和派上級将校がいわれのない罪で投獄されるといった事件が発生。これを受けて私は、「ガミラスに未来はない」と断定、ガミラスからの独立を求め半年にわたる激しい闘争に身を置くことになった……

ついぞ我らの願いはかなわなかった……
だからこそ私は、かの国を離れる決断をしたのだ
我らに続いた者たちを集め、臣民、軍部、政界問わず、今の政府に疑問を持つもの、融和派、旧マティウス派に結集を呼び掛けたのだ…
この国を離れ、新たなる国家を興すために……

そうして2185年、我らセカンドオーダーは、我らに続く者たちを従えて長い放浪の旅を始めたのだった……
どこへ行くとも知れぬ、長い放浪の旅を………

ー1話へ続く

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