第9話 反撃の烽火

 駐留艦隊がヴィルディアへ来て既に2年。半年が過ぎた辺りから契約内容を反故にした構成員によって首都やヴィラーディを含め帝国領内へ立ち入られている状態であり、駐留艦隊幹部を含めた酷い横暴に臣民が頭を悩ませていた____


バリオス「おい。そこの女」

国民「……なんで、ございましょうか……」

バリオス「俺はポルメーテ・バリオス。駐留艦隊の幹部だ。貴様、飯を持っているな?それも余分に」

国民「ある訳無いじゃないですか……、日々の配給でギリギリなんです…」

バリオス「態々この田舎惑星を守りに来てやった我々にその様な物言いとは…、死にたいのか?女」


駐留艦隊の(自称)士官、ポルメーテ・バリオスは、今の立場を良いことに帝国臣民達から酒・食い物を強奪し、果ては婦女暴行等と云った傍若無人な振る舞いをして居る事で有名であった。

駐留艦隊の者達が何故傍若無人な振る舞いが出来るのか、それは一重に銃を所持して居るからに他ならなかった。

何かを要求するときは必ず懐から銃をチラつかせ相手に脅しをかけていた……


国民「お、おやめ下さい……。わかりました、食料でもお酒でもお渡ししますから…」

バリオス「いい心掛けだ女。……貴様も付いてこい、俺の艦へ。俺1人ではどうにも持っていけそうに無いからな」


駐留艦隊の男達は臣民の女性を荷持持ちの名目で連れ込み、逃げ出せない状況を作り暴行を加え、彼らが"使い終わった"女は街中のどこかに放置される。

これら行為に対して警察は治外法権を理由に立ち入り捜査を拒まれ、政府はこれら事態に幾度の勧告、警告を行うも本国の権力を盾にされ無意味な状態となっていた____


幾度となく政府に抗議を続けて来た国民にも我慢の限界と云う物が有る。

カルラン暦9年2198年10月8日、この日クルクラシアで過去1番のデモが行われた


「「「追い出せー!追い出せー!駐留艦隊は要らないー!!駐留艦隊はこの国から出ていけーー!!」」」


アナウンサー「本日クルクラシアで開かれたデモ集会には、100万を超える民衆が駆け付け、一部が暴徒と化す事態にまで発展し、警備に当たっていた警官、デモ参加者双方に多数の負傷者を出す事態となりました。3年前のフルクファーラント大皇国からの支援艦隊は、その名目を忘れ今や無法者の集団と成り果てています。彼らへの対処が喫緊の課題とされる帝国政府の今後の対応に注目されます。」


ーーー総統執務室ーーー


幹部「閣下!全国でデモが起こっております!過去最大規模でいつ暴徒と化すか……」

クルーク「彼らには無理を強いさせすぎた…」

トイアー「閣下……このままでは……」

クルーク「……決断の時、か」

トイアー「如何されるおつもりで?」

クルーク「彼奴らからの枷を断つ。この状況、とうに堪忍袋がはち切れた!」

シナノ「現在の我が国では正面切っての戦いは不利です。何か策を講じねば敗北は目に見えております。」

クルーク「安心したまえ、既に手は打ってある」


―駐留艦隊 司令部―


デモの数日前、航宙艦隊総司令で有るセト大将がカンツ駐留艦隊司令の元に呼び出され会談に応じていた____


カンツ「以前から、貴様達に要求していたワンダス星系侵攻、総督がまだかとこちらを囃し立ててくる。前回のゴバース侵攻から大分時間も経った。もう艦隊の整備だって出来てるだろ」

セト「我々も必死に整備や補給、建造を推し進めているのですが、想定される戦力比を考えても動員可能数では戦力的に不足が多く…」

カンツ「オメーラこの3年で何してたんだよ……」

セト「先のゴバース太陽系への侵攻の後、星系駐留の為の予備艦艇動員や現地への物資輸送等で本国に残ってる艦艇だけでは足りない状態なのです。………ただ、我々とてこのまま何もしないつもりはありません。ですので」

カンツ「ですのでなんだ?」

セト「駐留艦隊の戦力をお貸し願えないかと思いまして」

カンツ「はぁ!?俺達がお前達の星系侵攻を手伝えって言うのか!?」

セト「元々はそちらの仕事だった物を我々が変わりに引き受けた事ですし、お手伝い頂ければそちらの成果も増えましょう」

カンツ「…貴様の言う通りではあるな……。どれくらい必要だ」

セト「90程お借りできないかと…」

カンツ「はぁ!?90だと!?艦隊の半分を持ってくって言うのか貴様は!」

セト「申し訳ありません。ただ、先のゴバース星系戦で我が方も少なからず戦力を喪失しており……」

カンツ「チッ!わかった。俺の独断だが貴様らに艦隊を貸し与える。ただし!下手なことをしたら直ぐに本国に情報が行くからな。」

セト「寛大なご配慮に感謝致します。」


―――――――――


クルーク「セト君には面倒な役を担わせてしまったな」

セト「お気になさる事はありません総統閣下。我等軍人は総統の矛。これからもどんどんとお使い下さい。」

シナノ「しかし流石は総統閣下。敵から直接戦力を借り受け守備を薄くするとは」

クルーク「なに、出来る手を様々考えている内にふと思いついてな。カンツの性格的にも少しメリットを見せてやれば乗ってくると踏んでの事だ。」

トイアー「しかし、我等が駐留艦隊に牙を向いたと無れば本国も黙っては居ないでしょう。」

クルーク「あぁ。だが、本件はジークハントの分析によれば、ティーラーのほぼ独断に近い形で動いているそうだ。それも相まって、事態の対処は恐らくティーラー1人がほぼ担う事になると想定されている。」

トイアー「なるほど?」

クルーク「仮に我等が牙を向いたとしても、他の閣僚陣からは『派遣したお前の責任なのに、ちゃんとした国軍を巻き込むのか』となり協力はほぼ得られないと考えられる。つまり、その場合に我が国に差し向けられる事になる艦隊は、ティーラー子飼いの物。馬鹿見たいな数攻め込んで来る可能性は低いと言うことだ。」

トイアー「なるほど」

クルーク「それから、ティーラーは我らに良い印象が無いそうだ。だからこそ、使い物にならないカンツ達を送ってきたのかもな。まぁ、それ程に油断している連中だ、叩くのは容易いさ。」

シナノ「…閣下、もし『智将』と言われる右大将が出てきたらそれこそ勝ち目が薄くなるのでは無いでしょうか。」

クルーク「無論そこにも打つ手はある。あの国は内部分裂寸前だ。少し情勢を刺激してやれば直ぐ瓦解するだろうな」

トイアー「情報局の腕の見せどころですね。」

クルーク「そうだ。トイアー、ジークハントに指示を出せ。『駐留軍への反攻が起こり次第情報局員を鹵獲艦に乗せフルク本国へ向かわせろ』とな」

トイアー「はっ!」

クルーク「セト君は直ちにワンダス派遣艦隊の陣容策定。カンツと侵攻に向け摺合せを行い、直ぐにでも出立出来るようにしろ」

セト「はっ!直ちに!」

クルーク「トイアー、もう一つ頼みがある。ハーデッシュに居るシャーフと回線を繋げて欲しい。"アレ"を使う。奴らの度肝を抜いてやろうじゃないか」

トイアー「直ちに準備します!」

クルーク「各位頼んだぞ!シナノはここに残ってくれ、反攻作戦へ向けた協議をしたい。」

シナノ「承知致しました。」


こうして反攻作戦の準備が開始された。その頃ハーデッシュベルトでは例の"アレ"が今か今かとその出番を待ち続けていた__


ーーーハーデッシュベルトーーー


クルーク『…と、言う訳だ。』

シャーフ「なるほど。ついにコイツのお披露目ですか。」

クルーク『あぁ。奴らの所為で進宙式も出来なかったんだ。その分もしっかり活躍してくれ。調整の方は進んでいるか?』

シャーフ「全て以上無く。ご指示あれば直ぐにでも飛べますよ、あの"龍"は」

クルーク『ほぅ、"龍"か。言いえて妙な例えだ。…所でハーデッシュには艦隊士官は居るのか?』

シャーフ「陸軍の警備要員や宙軍基地警備隊員は居ますが、艦隊士官は居りません。」

クルーク『……何だと?では、一体誰が指揮をすると言うのだ、その龍の』

シャーフ「閣下、お忘れですか?私はメルトラーデンの元艦長。嘗ての大公国軍では一時期艦隊士官でもありました。お任せ下さい。」

クルーク『そうか。シャーフ、今次作戦の要は君達だ。最新の注意を持って、冷静に大胆に活躍する事を期待する。』

シャーフ「はっ!必ずやご期待に添える活躍をして見せましょう!」


ハーディッシュベルトではシャーフ技術開発局長を中心に反攻作戦の調整が行われていた。

"龍"と例えられた新型戦艦の準備は順調に進み、今直ぐにでも発進できるほどの状態にまで整えられていた__


ーーーワンダス星系ーーー


先日の協議より1週間。反攻作戦の準備が整い、デルニラッツェ率いる侵攻艦隊はワンダス星系へ足を踏み入れていた


デルニラッツェ「ここがワンダス星系か。」

副長「事前調査によれば内惑星系の開拓は進んでいないものの外惑星系ではそれなりの開拓が行われているそうです。」

デルニラッツェ「外惑星系に偏った開拓か…」


星系侵入して50分、メルトラーデンのブリッジに遂に警報が鳴り響いた。


レーダー手「レーダーに感!前方より接近する艦隊有り、ワンダス艦隊です!」

デルニラッツェ「遂にお出ましか。数は!」

レーダー手「数凡そ85、横広く陣形を取り高速で接近中!」

デルニラッツェ「艦隊警戒陣形!フルク艦隊を前面に展開させワンダス艦隊に接近する!」


ワンダス星系の主惑星ワンダスの住人は所謂"亜人種"と呼ばれる種族であり、その中でも獣の特徴を強く持った"獣人"達がその強靭な肉体を用いて主に外惑星系の開拓を推し進めていた。

極めて理性的・理知的な種族であり、基本的には争いをしない物の、一度戦いとなればその肉体と精神力、連携力で敵を一網打尽にしてきた。

そんな獣人達の駆る艦隊が今、カルラディアの眼の前に現れた。


通信士「艦長、ワンダス艦隊旗艦から呼びかけです。」

デルニラッツェ「よし、メインパネルに回せ」

通信士「はっ!」


パネルに映し出されたのは、人類の様な獣の様な2つの特徴を併せ持つ男の姿であった。


獣人『私はワンダス軍司令、夏目提督。この星系は我等が生まれ育ち、我等が開拓せし物。如何なる理由が有って我等が星系に立ち入るか、外の者共よ。』

デルニラッツェ「私はカラーディ星系に在るカルラディア帝国の本艦隊司令、クルルク・デルニラッツェ。我が方にそちらとの敵対意思は無い。ナツメ提督、貴殿との会談を望みたい。」

獣人『……承知した、デルニラッツェ司令。様子を見るにそちらも複雑な様だ。私からそちらに赴こう。』

デルニラッツェ「感謝致します。」


ーーーメルトラーデン 艦長室ーーー


ワンダス艦隊から内火艇が発艦し、メルトリア級に夏目提督が移乗した。


デルニラッツェ「お越し下さり感謝致します夏目提督。早速ですが、今我が国は"フルクファーラント大皇国"なる超大国からの実質的な支配下に在る状況です。彼の国は恐怖でこの銀河を支配しようと企んでいる野蛮な国家です。我等は、その楔を断つためにこの星系に来たのです。我が艦隊と貴艦隊の間に在る艦隊。あの艦がフルクの艦艇です。あれを掌握し動かせるだけの人員をお貸し願えないでしょうか。」

夏目「成る程…。そちらに我が方侵略の意思は無いと?」

デルニラッツェ「全く無いと言えば嘘になります。我が国にも一応の体裁と言うものもがある。貴国には我が国の支配下に入って頂く事になる。」

夏目「結局はそのフルクなんちゃらと貴様たちも同類と言うことか。」

デルニラッツェ「そうなるでしょう。……ただ、我等にはあ奴らとは違う所が在る。」

夏目「……ほぅ?」

デルニラッツェ「我等は他者を重んじ敬意を持った行動を取れる。初めから相手を見下して交渉に着くような愚かな国では無いということを、理解して頂きたい。」

夏目「……フッ、無茶苦茶な論理を申される。だが、気に入った!我が方からも協力させて頂く。他者を見下し、敬意を持たぬ者共にこのシュリウシアを荒らせれては堪りません。共にそのフルクなんちゃらと云う国を倒しましょう。」


夏目提督は右手を差し出しデルニラッツェと握手をする。

こうして、フルクファーラントを打倒するためのピースが揃ったのであった。


ーーーヴィルディアーーー


幹部「閣下!ワンダス星系は無血懐柔です!」

クルーク「やってくれたか……」

トイアー「では閣下」

クルーク「宣伝省プレスフロアを解放しろ、直ぐに記者会見だ!」

トイアー「記者会見!?」

クルーク「あぁ。我が国初の正式な宣戦布告だ。臣民にも、そして奴らにも知らせてやらねばならんだろう?」

トイアー「たしかに……直ちに準備します」


ーーー記者会見ーーー


クルーク『臣民諸君、総統のロドルフクルークだ。フルクの連中が足を踏み入れて3年。交わした約束は守られず、苦しい思いをさせ続けてしまった事に心から謝罪する。しかし、屈辱の日々も此処までだ。我が国は今この時間を持ってフルクファーラントからの支援を断ち切り、宣戦を布告する!!聞いているか、フルクのカンツ!貴様の悪行も今日此処までだ!!愛すべき我がを傷付けた代償を払わせてやる!!』


カンツ「ふざけた事を吐かしやがる。あの総統サマはついに頭がイカれちまったみたいだな。売られた喧嘩は買うのが筋だ!全艦、この田舎惑星に降下しろ!!」

副官「アイ・サー!!」


クルークの宣戦布告と時を同じく、軌道上待機の状態だったカンツの艦隊がヴィルディアに降下。

遂に闘いの火蓋が切って落とされた。


シナノ「敵艦全艦がヴィルディアに降下を開始!」

クルーク「流石に早いな。シナノ、ハーデッシュに通常回線で平文を、秘匿回線で暗号を打て」

シナノ「はっ!手筈通りに」

クルーク「海警局艦隊の展開はどうなっているか!」

タオブン「既に完了しています。いつでも奴らを叩けますよ」

クルーク「宜しい、海警局は直ちに戦闘状況へ移行!各閣僚は総統府地下司令施設へ同行せよ!」

シナノ「閣下、私は宙軍本部へ参ります」

クルーク「うむ。頼んだぞ」

シナノ「はっ!」


敵副官「カンツ司令!ハーデッシュベルトに敵の指示が飛びました!俺等が直ぐ動くと思わなかったのか平文です!」

カンツ「そんな馬鹿があり得るのか……?まぁ良い、1/3、いや半数をハーデッシュベルトに差し向けろ!」

副官「はっ!」


事前協議の通り、ハーデッシュベルトには、平文の偽文と本命の暗号電文が送られ、カンツ達はこれに釣られた。

結果艦隊の半数はハーデッシュベルトに向かう事となり本星側に勝利の兆しが見えてきた。


ーーーハーディッシュベルトーーー


研究員「局長、司令部より暗号電文です!」

シャーフ「解読は」

研究員「既に完了しています!『作戦ハ予定通リ。ハーデッシュベルトハ戦闘体制ヘ移行セヨ』です!」

シャーフ「宜しい。アーヘンドラッヘ級のお披露目と行こう!!」


「アーヘンドラッへ級」

それは建国当初より建造が計画されていた新型戦艦。月で回収されたイ製コアの量産型を使用する艦艇として研究が進められて、新型の陽電子カノン砲や強化されたゲシュ=タム機関を搭載する艦として完成した。しかしフルクファーラント大皇国の接近などがあり、完成は秘匿され、政府高官、軍上層部の一部の者のみが知っているのみとなっていた。


シャーフ「機関始動!」

機関長「機関指導。ゲシュ=タム・エネルギー充填を開始。補助エンジン点火。エネルギー充填120%」

シャーフ「複製コア、接続!」

機関長「複製コア接続!機関回転数良好、定格まで後三◯…二◯…一◯、定格到達、行けます!!

シャーフ「ドックカバー解放!メインエンジン点火、アーヘンドラッヘ発進!!」

航海長「アーヘンドラッヘ、発進します!!」

シャーフ「総員、第一種戦闘配置、各砲座攻撃用意!」

観測手「先行して展開中のR型ベルメイとのデータリンクを確認。」

戦術長「マルチロックシステム正常稼働。レーダーとの連動異常なし。各種兵装オールグリーン、いつでも戦闘可能です!」

シャーフ「敵に奇襲を仕掛ける!決してガスから出るなよ」

航海長「了解!」


惑星内のアーヘンドラッヘ3隻の出撃とほぼ時を同じく、ポルメーテ・バリオス率いる艦隊45隻はハーデッシュベルトにワープアウトしていた。


バリオス「連中の無線の内容、確かなんだろうな。戦力の過半数がこの惑星に居るってやつ」

副長「えぇ、各艦通信士が記録しています」

バリオス「平文ってのが引っかかる…、警戒は怠るなよ!」

観測手「レーダーに感。敵の警戒機と、これは……未知の熱源感知!数3!」

バリオス「3だぁ?過半数ってのはどこ行きやがった……。詳細は判るか」

副長「赤外線スキャンなど本艦には搭載されていませんからね…」

バリオス「行くしか無い訳だ…。全艦に戦闘態勢を取らせておけ、ガスに突入するぞ!」

副長「はっ!」


艦隊のガス突入に併せて、アーヘンドラッヘの攻撃が始まった。


戦術長「ベルメイのレーダーにて目標を探知!」

シャーフ「各砲座統制射撃。照準合わせ!!」

戦術長「全門照準よし!」

シャーフ「撃ち方始め!!!」


アーヘンドラッヘ3隻から赤色の閃光が伸び、一門一撃の勢いで敵艦隊が爆煙に包まれて行く。


観測手「敵多数撃沈!」

副長「流石は旧式艦、脆いものです。」

シャーフ「このまま追い打ちをかける。各砲座射撃自由!殲滅行動に移る!!」

戦術長「撃ぇぇーー!!」


ほぼ一瞬とも言える速さで敵艦隊を壊滅状況に追い込むアーヘンドラッヘ。

此処までの強さは複製したイスカンダル製のゲシュ=タムコアの賜物と言えるだろう。


観測手「敵一隻、突っ込んできます!」

シャーフ「回避運動!近接戦闘に備え!!」

戦術長「対空砲座射撃始め!」

観測手「目標、本艦との衝突コース外れる!」

シャーフ「三番、撃ぇー!!」


その巨体に似合わぬ高機動で敵を翻弄し、誤爆をも誘発する姿は、正に"龍"と言っても過言では無いだろう。


シャーフ「敵残存艦艇数は」

観測手「残り8!敵旗艦はまだ健在の模様!」

シャーフ「よし、旗艦を沈める。照準合わせ!」

戦術長「主砲一、二、四番、照準よし!」

シャーフ「撃ぇー!!」


副長「だ、駄目です!あの艦は強すぎる!」

バリオス「この田舎虫共が!!俺はいずれ、いずれ皇…」


ポルメーテ・バリオスの乗艦していた、派遣艦隊旗艦は過剰とも言える砲火を受け豪快に爆沈した。


副長「敵旗艦爆沈!」

観測手「敵艦隊全滅!作戦完了です!」

シャーフ「1時間足らずで殲滅とは…。我ながら、とんでもない物を造り上げたものだな。」

副長「閣下にこの艦を献上できる日が待ち遠しくなりましたね」

シャーフ「軍令部に打電。これより本艦隊は本星戦に参戦する」

通信士「はっ!」


アーヘンドラッへ級の初陣は完勝で幕を閉じた。

しかし、本星では闘いが続いている__


ーーーヴィルディアーーー


クルーク「制圧艦隊の到着はまだか?」

トイアー「まもなくの筈です!」

クルーク「このままでは本星が持たんぞ…」


ヴィルディアの海では、警務省所属の海警局艦隊が防空戦闘を行って居る状態であったが、敵の攻撃を受け徐々に押され始めている状態だった…


砲雷員「レーダー、新たな目標探知!」

砲雷長「まだ来るのか、方位は!」

砲雷員「艦隊後方です。これは…、識別確認!ベルメイ航空隊です!」

艦長「来てくれたか。」

砲雷長「よし。ベルメイを援護しつつ戦闘を継続する。VLS16〜24セル解放。目標、Track No.3006から3015。攻撃始め!」

砲雷員「目標、Track No3006から3015。対空ミサイル諸元入力。Commence Fire,Salvo!」


遅れ馳せながらベルメイ航空隊による防空戦闘への参戦があり、敵航空部隊や小型艦艇群との戦闘は徐々に巻き返しつつ在る中、クルークの元へ更に吉報が訪れる


トイアー「月軌道上にジャンプ・アウト反応検知!制圧艦隊と……アーヘンドラッヘ艦隊です!」

クルーク「デルニラッツェ、シャーフまで来てくれたか」

幹部「デルニラッツェ司令より通信です!回線開きます!」

デルニラッツェ『閣下、おまたせ致しました。これより一気に押し返します!』

クルーク「頼むぞ、デルニラッツェ君」


デルニラッツェ「展開中の帝国軍全艦へ告ぐ!これより反撃に出る!敵を一隻残らず沈めよ!!」


デルニラッツェが指揮を取り、ヴィルディア上空へ展開中していた艦隊に対して一斉に攻撃が行われた。

攻撃を仕掛けて来た中にはフルク製の艦艇も混ざっており、駐留艦隊はこの状況に混乱が広がり統制が乱れて行った。

やがて、他のほぼ全ての艦艇が空の藻屑となった頃、一隻の艦が逃げる様にジャンプしていき、それに続く様に5隻程の艦艇がジャンプしてヴィルディアからフルクファーラントの艦艇は駆逐された。

しかし、超大国フルクファーラントへ宣戦を布告した事で、カルラディアには過酷な運命が待ち受けているのであった__

10話に続く

コメント

このブログの人気の投稿

製作委員会 メンバー紹介

第1話 我が航路に光を求めて

第3話 芽吹き、新たな試練