第2話 始まりの光 カラーディ


元ガミラス、セカンド・オーダーのクルーク 一行はポルトメルシアで遭遇した海賊と思われる敵からの襲撃に遭う。

苦楽を共にした艦艇を何隻か失いながら緊急ワープを敢行。事なきを得たのであった……


ーーーワープアウトーーー



艦隊旗艦"ロドルフィア"艦橋

航海長「ワープ終了、艦体に損傷認めず」

艦長「レーダー・スキャナー直ちにチェック! 空間座標照合!現在位置の特定急げ!」

乗組員「レーダー・スキャナー、共に反応無し、敵影を認めず。」

乗組員「空間座標照合完了。現在位置を確認、カラーディ星系です!」

クルーク「カラーディ……太古から存在する星系…… ガミラスと関係があると噂されていた星系だな」

副長「閣下、第4惑星ヴィルディアのスペクトル及び大気・表面温度等の条件がガミラスに類似しています。これならば、我らの移住先になり得るかもしれません。」

クルーク「そうか。副長、直ちに調査隊を編成。この星系の詳細な情報を調べてきてもらいたい。」

副長「はっ!調査隊を編成、星系を調査します!!」

クルーク「艦長、艦隊は一度この宙域にて待機する。ハーマリア星系を離れたとはいえ、何時またあの敵が襲ってくるかわからない。全艦に警戒を厳とする様に伝えよ。」

艦長「はっ!!」


クルークの指示で、即座に調査隊が編成され、カラーディ星系の調査が開始された。第4惑星ヴィルディアはガミラスと似た条件を持つことがわかり特に念入りな調査が成された。


ーーー3日後ーーー


副長「閣下、調査が終了致しました。」

クルーク「そうか、結果はどうか?」

副長「はっ!惑星ヴィルディアは、予測通り我らが居住可能な惑星でした。」

クルーク「そうだったか…。ご苦労だった、副長。調査隊にも労いの言葉を掛けておいて欲しい。」

副長「はっ!皆喜びます!」

副長「それと、併せての報告なのですが、ヴィルディアには2つの衛星が在り、内一つにシェヘラザードらしき艦影と何かしらの基地と思われる建造物を確認しました。」

クルーク「シェヘラザードとは、イスカンダルの"あの"シェヘラザードか?」

副長「はい、全くの同型と思われます。月に関する情報は、先にお伝えした方がいいかと思いまして、まだ調査はしておりません。」

クルーク「そうか、改めてご苦労だった。下って構わない」

副長「はっ!失礼致します!」


副長が、クルークの労いの言葉を調査隊員にも伝える為、艦橋を下りる


クルーク「早速だが、入植を開始しよう。通信士、"メルトラーデン"のアンジェロ中将を呼び出して欲しい。」

通信士「はっ!直ちに呼び出します!」


−メルトリア級"メルトラーデン"艦橋−

通信士「シャーフ艦長、ロドルフィアより通信です」

シャーフ「ロドルフィアから?閣下に何かあったのか?」

通信士「いえ、近衛師団のアンジェロ中将にご用だそうです。」

シャーフ「そうか…、私が呼ぼう。『アンジェロ中将、艦長のシャーフだ。閣下からお呼び出しがあった。直ちに艦橋に来てもらいたい。』」


シャーフ艦長の呼びかけを受け、自室に待機していたアンジェロ中将が艦橋へ上がる


アンジェロ「閣下から呼び出しとは、珍しいな」

シャーフ「あぁ、大事無いと良いのだが…」

アンジェロ「心配性だな、艦長は。通信士、私に変わってくれ」


−ロドルフィア艦橋−

通信士「アンジェロ中将が出ました!」

クルーク「うむ、私に変わって欲しい。」


そう言って通信士席にクルークが座り、メルトラーデンとの交信を始める


アンジェロ『直々にお呼び出しとは、何事ですかな?閣下』

クルーク「君に頼みがあるんだ、アンジェロ」

アンジェロ『何でしょう?』

クルーク「一時的に艦隊の指揮権をそちらに移譲する。君が指揮を取ってほしい。」

アンジェロ『唐突ですな、なぜまた?』

クルーク「ヴィルディアの月に、基地施設の跡が確認された。それを調査する」

アンジェロ『閣下がご自身で、ですか?』

クルーク「そうだ」

アンジェロ『危険です!閣下にもしもの事があれば!』

クルーク「心配ない。外部からの測定で、基地機能が放棄されて既に数十年が経過して居る事と、トラップ等が無いことを確認した。」

アンジェロ『……わかりました。我らは何をすれば良いのでしょうか?』

クルーク「ヴィルディアに降下し、惑星への入植を進めて欲しい。」

アンジェロ『と言うことは!我らも住める土地と言うことですか!』

クルーク「その通りだ。既に調査も完了している。頼まれてくれるか?マーク」

アンジェロ『閣下からのお頼みです。お受け致します。艦隊は私にお任せ下さい。』

クルーク「助かるよマーク。話は以上だ。通信を終わる」


交信を終え、クルークが艦隊の全員へ放送する


クルーク「諸君、ロドルフ・クルークだ。調査の結果、惑星ヴィルディアは我々が居住可能な惑星であると言うことが判明した。よって、現時刻を持ってヴィルディアへの入植を開始する。我がロドルフィアはヴィルディアの月の一つに確認された反応を調査する為、一時艦隊を離れる。入植の指揮は、2番艦のアンジェロ中将に一任している。諸君との、新たなる地にての再開を心待ちにしている。以上だ。」


この放送を期に、ロドルフィアは艦隊を一時離脱し、ヴィルディアの月へと向かって行った____


ーーーロドルフィアーーー


乗員「まもなくヴィルディアの月に到着します。」

艦長「了解。着陸用意」

航海長「着陸用意!」


艦隊を離脱し1時間弱、ロドルフィアはヴィルディアの月に辿り着いていた。

ヴィルディアには、小さな月と大きな月が存在しており、今回の調査対象となったのは大きな月の方であった。

"ガコン"と地面に、降着装置が接触した音が艦に響き渡った。

無事に月に降りた事を感じ、艦橋の全員が安堵していた。


航海長「着陸完了しました」

艦長「総員、船外服着用!月の探索を開始する!」

クルーク「艦長、シェヘラザードの位置は?」

艦長「本艦の前方、約800mの位置に信号を感知しました。」

クルーク「宜しい。艦長は本艦に待機。トイアー君、調査には君にも同行してもらいたいが良いかな?」


クルークに名前を呼ばれた元セカンド・オーダー幹部の"マリウス・シュトラス=トイアー"が返事をする。


トイアー「はっ!部下を数人連れていきたいのですが、宜しいでしょうか?」

クルーク「構わない。準備が整い次第下艦、調査に向かう」

トイアー「はっ!」


非常時に艦を直ぐ動かせるように、艦長を含めた運用に必要な人員を残し、調査隊が編成された。

中でも、シェヘラザードと基地施設の調査隊は、クルークを中心に編成され、詳しい調査が開始された__

クルーク「やはりこれは、"シェヘラザード"……」

トイアー「その様ですね。この形状、間違いないかと……。実物を見るのは私も始めてです。」

クルーク「いずれはこれを回収し、イスカンダルの技術を取得したいものだ。」

トイアー「同感です。これがあれば、技術開発も捗るでしょう。」

クルーク「そうだな。技術者達には良い土産になりそうだ」

部下「閣下!こちらに、基地施設に通じてると思われる扉が!」

部下「トラップ等の類は確認できませんでした。」

クルーク「そうか。では、中に入るとしよう」

トイアー「はっ!全員続け!」


クルーク隊は眼前の扉を開け、その中の調査を進めていくのであった____


ーーー入植艦隊ーーー

クルークが月でシェヘラザードを発見した頃。放浪艦隊はヴィルディアへの入植作業を進めていた____


航海長「現在、ヴィルディア軌道上1500km。まもなく大気圏に突入します。」

アンジェロ「承知した。通信士、全艦へ伝達。艦内各部のチェック、特に気密のチェックを入念にする様に」

通信士「はっ!」


通信士が艦隊の全艦へ、大気圏突入前の最終チェックをする様に伝えられ。徐々に確認が完了した旨の報告が上がってくる。


副長「全艦の最終チェック完了。何時でも行けます。」

シャーフ「了解した。宜しいですか?アンジェロ中将」

アンジェロ「うむ。全艦、大気圏突入せよ!」

アンジェロ中将の指示を受けた艦隊は、遂にヴィルディアの大気圏へ突入した。空気との摩擦で発生する熱とプラズマの輝きを放ちながら、ヴィルディアの厚い大気層を突破しいてった____

突入から5分後、艦隊は地上から上空80kmの位置で集結していた。


航海長「全艦の大気圏突破を確認!」

シャーフ「通信士。全艦に艦内機構の再チェックを急がせろ」

通信士「はっ!」

アンジェロ「航海長、着陸可能な座標を早急に割り出してくれ」

航海長「了解」

アンジェロ「シャーフ君、座標が確定次第、当該座標に着陸。着陸後、陸戦隊に周囲の安全確認をさせて欲しい。」

シャーフ「了解です。戦術長、陸戦隊に出動待機命令。船外着用の必要は無い。惑星内戦闘用の第三種兵装で待機させよ。」

戦術長「はっ!陸戦隊を第三種兵装で待機させます!」

航海長「アンジェロ中将、座標の策定が終了しました。湾の様な形状で、陸地には平野が広がっては居ますが、背後には山が聳えていますので防衛も容易いかと…」

アンジェロ「よろしい、直ちに着陸の準備を進めよ。前進半速!」

航海長「はっ!着陸準備を開始します!前進半速、予定座標へ前進せよ!」


アンジェロ中将乗艦のメルトラーデンが先行し、座標に向かいながら艦隊が着陸体制を整えていく。

予定地点の上空に達したと同時に降着装置を下ろしたメルトリア級はましたの平原にゆっくりと降下して行く。

地面に近づくに連れて発生した風圧が芝を強く靡かせる。

芝に写る影が次第に大きく写り、やがて"ガコン"という音が艦全体に伝わり、無事ヴィルディアの大地へ降り立ったことを感じさせる。


航海長「予定地点への降下完了!」

シャーフ「タラップ降ろせ、陸戦隊出動!戦術長、陸戦隊には、何があってもこちらから発砲しないよう厳命せよ」

戦術長「了解!」


陸戦隊が周辺の安全確認に動き出すと同じくして、艦隊も徐々に着陸を進める。

陸戦隊の安全確認が終わる頃には、艦隊の全艦が着陸を終えていた…

陸戦隊から、周囲に驚異無しと報告を受けたアンジェロ中将は、艦隊の施設隊を総動員し臨時キャンプの設営を開始した。

キャンプの設営開始と同時に、同行していた民間人達の下艦も進められていった。

キャンプの設営は、手の空いた軍人や民間人達の協力もあり、4時間強という驚異的な速さで完了したのだった____

ーーー調査部隊ーーー

月の基地施設内部の調査を始めたクルーク隊。

その内部は、上空から予想していた大きさよりも数倍巨大なものであった…


クルーク「随分と広い基地だな……、一体何に使われていたのか…」

トイアー「ここまで広いと、様々な目的で使われていたのだと予想できますね。設備を見るに、メインの機能は造船だと思われますが」

クルーク「この基地を復旧出来れば、いずれ整備する予定の軍にも使えそうだな…」

部下「閣下!こちらに、何かカプセルの様な物があります!」


部下に呼ばれ、クルークとトイアーの二人が、そのカプセルの様な物を見に行く

呼ばれた先で二人が目にしたものは、二人が知っている"あるもの"に酷似していた


クルーク「これは…、ゲシュ=タム・コアなのか?」

トイアー「ゲシュ=タム・コア?この小さなカプセルの様な物が、ですか?」

クルーク「……この形、そしてこの輝き、間違い無いだろう。それも恐らく、イスカンダルの純正ゲシュ=タム・コアだ!これがあれば、恐らく現状の2乗倍か3乗倍……、いや、それ以上の出力を持ったエンジンを作れるかもしれない!」

トイアー「では、回収しますか?」

クルーク「そうしよう。シャーフ君に良い土産が出来たな」

トイアー「奴も喜びます。他には何か有ったか?」

部下「いえ、これ以外には特に目ぼしい物は」

クルーク「そうか。では、ヴィルディアに向かうとしよう」


イスカンダルの純正ゲシュ=タム・コアを手に入れたクルーク一行は、ロドルフィアへと戻り、他の調査隊の帰還を待って月を発進、ヴィルディアへと向かった。

ーーーーーー

月を発進して1時間。ロドルフィアはヴィルディア大気圏への突入準備を進めていた___


航海長「現在、ヴィルディア上空1500km」

副長「艦内各機構、最終チェック完了。2番艦よりの位置ビーコン感知」

艦長「閣下、本艦は何時でも大気圏に突入できます。」

クルーク「了解した。大気圏へ突入せよ」


クルークの指示を受け、ロドルフィアがヴィルディアの大気圏に突入する。

キャンプ設営地点の上空から大気圏へ突入したこともあり、夜に移り変わりつつある空に、摩擦による炎が映え、地上からもその様が良く見えていた。


シャーフ「アンジェロ君、ロドルフィアが大気圏に突入した様だ」

アンジェロ「その様だな。無事に月の調査が終わった様で何よりだ。」


艦体が摩擦熱による炎と、プラズマの光に包まれる中、クルークは1人、これまでの事に思いを馳せていた…


クルーク(この星を見つける迄苦節5年…。殿下の理想を叶える為、約束を守る為と云えど、着いてきてくれた彼らには苦しい思いもさせてしまった……。ようやく見つけた、我らの新たなる光…、これを絶やさぬ様に努めねばな)


航海長「大気圏、突破しました!」


航海長の一言で、回想中のクルークが引き戻される。


艦長「艦内機構の再チェック急げ!」

乗員「各部異常なし」

副長「座標照合急げ!」

航海長「指定座標との誤差無し、キャンプ上空100kmのポイントです。」

トイアー「下からのビーコンも継続して受信中です。このまま降下すれば問題無いかと」

クルーク「その様だな。航海長、降下開始してくれ」

航海長「はっ、降下開始します。」


ロドルフィアが、キャンプへ向けてゆっくりと降下してくる。

最初、地上からは豆粒にも満たない大きさでしか無かったが、徐々にその姿がはっきりと見えてくる。

キャンプに居る人々も空を見上げ、クルークの到着を心待ちにして居る。

ロドルフィアの下ろした降着装置が接地し、サスペンションによって艦体が沈み込む。

やがてロドルフィアのハッチが開きタラップが下りてくる。徐々に乗員が下艦し、最後にセカンド・オーダー大将軍、ロドルフ・クルークが艦を降りてくる。

艦を降りたクルークを、マーク・アンジェロとシュティーア・シャーフの二人が出迎える。


アンジェロ「閣下、ご到着を心待ちにしておりました。」

シャーフ「ご無事で何よりです。閣下」

クルーク「二人とも出迎え感謝する。早速で済まないがマーク、セカンド・オーダーの全幹部を集めて欲しい。シュティーア、集会場の様な場所はあるかな?」

アンジェロ「承知しました!」

シャーフ「直ぐにご案内致します。君も来るだろう?マリウス」

トイアー「勿論だ」


こうして、ヴィルディアの大地へ降り立ったクルークは、休むこと無く、新国家建国の為に動き出した。

集会場に呼び出されたセカンド・オーダーの幹部達に、クルークからの指示が飛び、国家設立迄の臨時統治機構の設置や、文官達による新憲法制定等の様々な事が実施される事となる。

また、それらと並行しシュティーア・シャーフとマリウス・シュトラス=トイアーを中心にゲシュ=タム・コアの分析が開始され、小型高性能化された新型ゲシュ=タム機関導入への研究が進められる事となる。


                        ー第3話へ続く

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