-Side Story- イルシアとマリュリア 中編①「変化」
夜。
マリュリア「おやすみクラーラ」
イルシア「おやすみなさい、お姉ちゃん」
マリュリアはいつも通り椅子に座り仕事を片付けていた。少ししてイルシアが眠った事を確認すると、隣の会議室へ向かった。念の為、拳銃を持つ。
会議室と部屋の間の扉をそっと開ける。
トイアー「マリュリア」
マリュリアは部屋に入って、そっと扉を閉めた。
マリュリア「内務卿、お待たせ致しました」
トイアー「なあマリュリア…、久しぶりにタメ口で喋らないか…?」
マリュリア「そうですね…いいでs、、いいよ」
トイアー「へへっ。で、話って何だい?」
マリュリア「話すと言うより相談が2つくらいある…かな。」
トイアー「相談事か、マリュリアにしては珍しいな。どうした?」
マリュリア「まず一つ目は、クラーラと仲良くしてあげてほしいんです」
トイアー「ん~、僕もそうしたいんだが、小さい子はよくわからないんだよな…」
マリュリア「とりあえずは優しく接して、しっかり話を聞いてあげて、って感じで」
トイアー「そう言われてもなぁ、小さい子と触れ合う実感がないから難しい…」
マリュリア「出会った時の私に接したようにすれば大丈夫ですよ」
トイアー「あの頃か…懐かしいな。」
マリュリア「はい。知らない星でずっと一人だった私を保護してくれて、しっかり面倒をみてくれたのは内務卿ですから。このご恩は忘れませんよ」
トイアー「もう6年も過ぎたのか…てか全然タメ口じゃないじゃん!」
マリュリア「む、むぅ。目上の方にタメ口で話すの、慣れてないんですもんっ」
トイアー「ふふっ、まぁいいよ笑。徐々に慣れていったらいいさ。んで、二つ目は?」
マリュリア「はい、エルゼの事で」
トイアー「エルゼか。少し前から問題行動があったが、何かあったか?」
マリュリア「はい…クラーラが怖がっていますし、それに何か探りを入れてるように見えるんです」
トイアー「ふむ、勘付かれたのだろうか…。じゃあとりあえず、エルゼの仕事を増やしてマリュリア達から遠ざけよう。一応マリュリアも様子は見ておいてくれ」
マリュリア「ありがとうございます、内務卿」
トイアーが時計を見る。
トイアー「おっと、もうこんな時間だ。そろそろ休みな、明日も朝から仕事だぞ」
マリュリア「ではお先に休ませていただきます。お疲れ様でした」
トイアー「うむ、ゆっくり休むと良い。おやすみ、マリュリア」
マリュリア「おやすみなさい、内務卿」
マリュリアは扉を静かに開け、部屋に戻り、また静かに閉めた。
マリュリア「…クラーラはぐっすりだね、」
イルシア「…んっ…お姉ちゃん…?」
マリュリア「ああ、ごめんね、起こしちゃったね」
こっそりと机の引き出しに拳銃をしまった。
イルシア「お姉ちゃん寝ないの…?」
マリュリア「もう寝るよ。」
ソファーに座った。
イルシア「お姉ちゃんはソファーで寝てるの…?」
マリュリア「そうだよ。」
イルシア「あの…その…、あの…」
マリュリア「どうしたの笑?」
イルシア「その……一緒に寝てはくださいませんか…?その、一人だと寂しくって…」
マリュリア「うふふ、わかった」
ソファーから立ち上がり、イルシアが寝ているベッドに入った。
イルシア「あたたかい…お姉ちゃんと一緒で嬉しいですわっ」
マリュリア「そっか、それはよかった…。」
イルシア「お姉ちゃん、大好きですのよ……すぅ…すぅ…」
イルシアは眠ってしまった。
マリュリア「私もだよ、おやすみクラーラ」
マリュリアも眠りについた。
この日以来、しばらくは何も起こらなかった。内務卿が仕事を増やしたからなのか、エルゼが部屋に来ることも、会うことこともなかった。
―――
それから数週間後。
マリュリアは特務隊本部での用事ができた為、クラーラを内務卿に預ける事にした。
マリュリア「それでは内務卿、頼みました」
トイアー「うむ、任せておけ。マリュリアも頑張るんだぞ」
マリュリア「はい!クラーラ、内務卿のそばにいてね。もしかしたら今日帰って来れなくなるかもだから」
クラーラ「わかりましたわ。お姉ちゃん、頑張ってね」
マリュリア「うん、行ってきます!いい子でね!」
クラーラ「いってらっしゃーい!」
マリュリアは警務省に向かった。
トイアー「さてと。えーと…クラーラちゃん」
クラーラ「なんでしょうか…?」
トイアー「んーっと…何かやりたい事とかあるかい…?」
クラーラ「んー…とくにありませんわ」
トイアー「そうか、じゃぁ私は仕事をしているから、何かあったら遠慮なく言ってくれ」
クラーラ「はい」
それから数十分もの沈黙が続いた。
部屋の壁や天井を眺めていたイルシアが、飾ってある写真に目を向けた。
クラーラ「内務卿さん、猫ちゃんを飼っているのですの?」
トイアー「猫?あぁ、まーりゅの事か」
クラーラ「まーりゅ…?マリュリアお姉さまですの…?」
トイアー「そうだよ、マリュリアは猫になれるんだ」
クラーラ「ね、猫になれる…?それはどういうことですの?」
トイアー「うーむ、原理はわかっていないんだが、人の姿にも猫の姿にもになれるんだよ」
クラーラ「だからお姉さまの部屋には猫の道具が…」
トイアー「その通りだ。あそうだ、猫の姿を見せてくれって頼んでみたらどうだい?」
クラーラ「へ、え…?頼む?」
トイアー「うむ。私が言っても恥ずかしがってあんまり見せてくれないが、クラーラなら見せてくれるんじゃないか?」
クラーラ「…自信はないですわ…」
トイアー「ならば私が一緒にいてあげよう。たまには見たいからねっ」
クラーラ「えっ…や…、それは…その…」
トイアー「いかんいかん、また総統閣下に怒られてしまう。すまない、クラーラ」
クラーラ「大丈夫ですのよ」
・・・
数時間して、マリュリアから電話があった。
マリュリア『内務卿、クラーラは大丈夫ですか?』
トイアー「大丈夫だ、問題は何一つないぞ。クラーラに代わろうか?」
マリュリア『お願いします』
クラーラ「お姉ちゃん!会いたかったですわ!」
マリュリア『クラーラ!元気そうでよかった。私も会いたかった!でもごめんね、クラーラ。今日は帰れなくなっちゃった…』
クラーラ「そうですの…」
マリュリア『大丈夫よ、明日には帰るからね。待っててね』
クラーラ「わかりましたわ、」
マリュリア『うん、いい子いい子!じゃあクラーラ、私仕事に戻るね。またね』
クラーラ「は、はい……、お姉ちゃん!」
マリュリア『どうかした?』
クラーラ「お仕事頑張ってねっ」
マリュリア『っっ…ありがと、クラーラ!それじゃっ』
電話が切れた。
クラーラはマリュリアの声が聞けて嬉しそうにしていたが、しばらくすると寂しそうな表情に戻ってしまった。
トイアー「クラーラちゃん、何かするかい?」
クラーラ「結構ですわ…」
トイアー「うーん…はっ、そうだ!」
クラーラ「?」
トイアー「マリュリアは甘いもの大好きなんだよ。買いに行って、明日マリュリアが帰ってきたらプレゼントしないかい?」
クラーラ「プレゼント…行きたいですわ!!」
トイアー「よしきた、それじゃあこの仕事だけやっちゃうから、ちょっと待っててな」
クラーラ「はいっ!」
・・・
数時間後。すっかり日も暮れてしまったが、総統府内なら安全だ。人目には警戒しつつ、食堂横の購買部へ向かう。
トイアー「クラーラ、しっかりついてきてね」
クラーラ「はい!楽しみですわ!」
広い総統府内の廊下を進む。夕食刻で、食堂には人が多く来ていた。購買部は人混みの向こう側だ。
トイアー「しまった、人目の多い時間に来てしまったな…」
クラーラ「少し収まったタイミングで行ってしまいましょうっ」
・・・
トイアー「よし、ここだ。総統府の購買部は広いから、だいたい何でもあるぞ」
クラーラ「わぁあ!美味しそうなのがいっぱいですわ!」
トイアー「遠慮せず好きなの選んでいいぞぉ!」
クラーラ「いいのですか?」
トイアー「もちろんだ、全部僕が買ってあげるよ」
―――数十分後―――
トイアー「欲しいものは買えたかい?って、そんなに買って食べ切れるのか?笑」
クラーラ「えへへ、お姉さまと一緒に食べるのですもの」
トイアー「そっかそっか笑」
クラーラ「もちろん内務卿さんも一緒ですのよ」
トイアー「ほんと!?嬉しいなぁ」
部屋に戻り買った物を冷蔵庫に入れた。
入れ終わると内務卿は仕事に戻った。クラーラは明日が楽しみでワクワクしていた。
・・・
数時間後。
トイアー「もうこんな時間だ。クラーラちゃんはどこで寝る?」
クラーラ「私はお姉さまの部屋で寝ますわ」
トイアー「わかった。私は執務室にいるから、何かあったら呼ぶんだぞ」
クラーラ「はい。おやすみなさい、内務卿さん」
トイアー「おやすみ、クラーラちゃん」
イルシアはマリュリアの部屋に行きベットで横になった。内務卿の執務室は、マリュリアの部屋の二つ隣。会議室から通り抜けできるようになっていた。トイアーは念の為、マリュリアの部屋の前に警護を立たせておいた。
クラーラ「一人は寂しいですわ…早くお姉ちゃん帰って来ないかしら………」
イルシアはホログラム装置を充電器に繋いだ後、不安がりながらも眠りについた。
―しばらくして、部屋の扉の鍵が開く。
イルシアは目を覚ました。
イルシア「…!お姉ちゃん!お姉ちゃんお帰りなさ……」
扉の方を見る。暗闇に目が慣れて、入ってきた人物の顔が分かるまで少しかかった。寝ているふりをしておけばよかったと後悔した。
イルシア「え、エルゼ…さん……いや…やだ……こないで…!」
イルシアが目を覚ます。
イルシア「っ!…はぁ…はぁ……夢…か……」
とその時、会議室との間の扉をノックする音が鳴った。
トイアー「私だ、トイアーだ。クラーラちゃん、大丈夫か!」
イルシア「内務卿…さん……。大丈夫です…。」
トイアー「そうか…大丈夫ならいいんだ。会議室で仕事をしていたら、うなされているような声が聞こえたから心配で来てしまった」
イルシア「お邪魔してしまいましたわね...私は大丈夫でしてよ、おやすみなさい…」
トイアー「うむ…おやすみ…」
トイアーは部屋に戻った。
翌日、マリュリアが帰ってきた。
大きめのバッグを抱え、帰ってすぐに内務卿執務室へ向かった。
マリュリア「失礼します。内務卿、只今帰りました」
トイアー「マリュリア、お帰り。お疲れ様!」
マリュリア「ありがとございます。クラーラは?」
トイアー「マリュリアの部屋にいるよ、まだ眠っているようだけれどね」
マリュリア「まだ寝ているのですか。もう昼過ぎですけど…。」
内務卿をじっと見る。
トイアー「私は何もしてないぞ!?本当だからな!」
マリュリア「わかってますよ笑」
トイアー「ほっ...ところで今回は何だったんだ?」
マリュリア「はい、特務隊の武器支給があり練習も兼ねて行ってきました。それと今後の警護体制についても検討してきました」
トイアー「そうだったのか、ご苦労だった」
マリュリア「はい、では私はこれで」
トイアー「あーーそうそう、クラーラが起きたら一緒に来てくれるかい?」
マリュリア「?…わかりました、では後ほど」
マリュリアは執務室を出て自室へ向かった。
マリュリア「クラーラただいま…まだ寝てるね…まぁ、じゃあ仕事でもしておこうか」
持っているバッグや荷物をしまい、椅子に腰掛け伸びをする。疲れを取るため栄養ドリンクを飲んで、仕事に取りかかった。
マリュリア「ん〜〜っ、ふわぁ…昨日は寝れなかったからなー」
マリュリアは仕事をしていた。
二十分程経った頃にイルシアが目を覚ました。
イルシア「はぅ…っ!」
イルシアは体を起こし部屋の中を見回した。
マリュリアの机に目を向ける。寝起きのぼんやりとした視界の中に、明るいオレンジ色の猫耳が飛び込んできた。
イルシア「お姉ちゃん…」
マリュリア「ん、クラーラおはよ!」
イルシアは安堵した。涙がでてきた。
マリュリア「大丈夫?」
イルシア「大丈夫ですのよ…寂しかっただけですわ」
イルシアは泣き笑った。
マリュリア「そっか、大丈夫だよ、私はここにいるよ…ほらおいで?」
マリュリアは腕を広げた。
イルシア「うんっ」
イルシアは立ち上がり、マリュリアの方に向かった。そして近づくと、マリュリアに抱きついた。
マリュリア「よしよし、大丈夫だよー」
イルシア「うんっ…ぅっ……うわぁーん」
イルシアは、安堵の涙なのか寂しさの涙なのかが自分でもわからなかった。だか、マリュリアがいてくれることに対する安心感が勝ったのだろう。心は暖かな光に満ちていた。
マリュリア「一人にしちゃってごめんね、一緒だよ」
イルシア「ありがとうお姉ちゃん…ずっと一緒ですわ!」
マリュリアも感極まり、泣きそうになりながらイルシアを抱きしめる。
イルシア「…お姉ちゃんっ…!」
マリュリア「ん、どうしたの?」
イルシア「おかえりなさい!」
マリュリア「うふふ…ただいまっ、クラーラ!」
イルシア「えへへ〜」
二人はにっこりと笑い合いながら、しばらく抱き合っていた。
数分してからマリュリアがふと思い出した。
マリュリア「そういえば、クラーラが起きたら内務卿の所に行かなきゃだった。…行ける?」
イルシア「…!もちろんっ、行きますわよっ!」
イルシアは何かを楽しみにしているようだった。
イルシアは変装して、マリュリアと共に内務卿執務室へ向かった。
・・・
扉をノックして部屋に入る。
マリュリア「内務卿、失礼します」
トイアー「よくぞ来た。クラーラも一緒だな」
クラーラ「もちろんですのよ!」
マリュリア「!、二人とも仲良くなれたのね!よかった!」
トイアー「えへへ」
マリュリア「なんで内務卿が…(困惑)」
トイアー「まぁそれより、マリュリアは座っていてくれ。おいで、クラーラ」
マリュリア「…?…わかりました」
マリュリアがソファーに座ると、トイアーとイルシアは冷蔵庫を開けて何かを取り出した。
クラーラ「お姉ちゃん!」
マリュリア「なーにー?それー」
クラーラ「プレゼントですわ!」
そう言うと、マリュリアの前に昨晩買ってきた物を並べた。
マリュリア「わぁ〜!スイーツだ!!」
イルシアとトイアーは買ってきた物を次々と並べる。
マリュリア「…なんか多くない笑?」
トイアー「クラーラが皆で一緒に食べると言っていてな…つい好きに選ばせてしまった」
マリュリア「もー内務卿ったら笑」
トイアー「てへっ」
マリュリア「なんだこいつ」
クラーラ「お姉ちゃん、昨晩内務卿さんと一緒に購買部に買いに行きましたのよ!」
マリュリア「うふふ、ありがとうね、クラーラ。内務卿も!」
クラーラ「えへへっ」
トイアー「では、食べるとしようか」
マリュリア「はいっ!」
クラーラ「はーい!」
マリュリアはよだれを垂らしている。言葉に表すのは難しいが、とにかく甘ったるそうだ。
三人はスイーツを食べ始めた。
マリュリア「うふふ〜幸せぇ〜♡」
クラーラ「美味しいですわっ!それにお姉ちゃんとっっても嬉しそう!」
二人とも嬉しく楽しそうだ。内務卿は2人を見て幸せを感じながらちまちま食べていた。
・・・
しばらくして。
マリュリア「流石に多いね…」
クラーラ「うんっ…もう満腹っ」
トイアー「ちょっと買いすぎたな…」
流石に量が多すぎた。どれだけ買ったのやら。
トイアー「…手を付けずに余った物は、他の者に分けたらどうだ?」
マリュリア「いいですね。そうしましょっ」
クラーラ「…ちょっとくらい取っておいてもよろしくて…?」
トイアー「勿論だとも」
イルシアは嬉しそうだった。
食べたものを片付けて、取っておきたい物を持つと、二人は部屋へ戻った。
マリュリア「美味しかったな〜、あれクラーラが選んでくれたの?」
クラーラ「えぇ、私が選びましたのよ!」
マリュリア「ありがと、めちゃくちゃ美味しかったよ!また一緒に食べようねっ」
クラーラ「はいっ!」
マリュリア「よし、じゃあ私は溜まった仕事を片付けちゃうね」
クラーラ「お姉ちゃんお仕事ですの?」
マリュリア「うん、やらなきゃいけない事がちょっと多くてね…」
クラーラ「…そうですの……」
マリュリア「ごめんね、」
クラーラ「いいですのよ!待ちますわ」
マリュリアは仕事に取り掛かった。来月に予定されている「総統府警備隊陸上戦闘部隊・警務省陸警局特殊任務隊の合同公開訓練」に向けた、関係各所との調整だ。机の上には書類の山が積まれ、マリュリアは色々な部署にひっきりなしに電話をかけている。
クラーラ「退屈だなぁ...」
・・・
数十分後。
クラーラ「お姉ちゃん〜」
マリュリア「どうしたのー」
クラーラ「まだですの〜?」
マリュリア「まだだねー…」
クラーラ「そうですの………。っ!お姉ちゃん、紙とペンを貸してくださる?」
マリュリア「いいよ…はい」
マリュリアはイルシアにペンを渡し、仕事を続けた。
イルシアはソファーに座って、鼻歌を歌いながら何かを描いていた。マリュリアは気になって、より一層スピードを上げて仕事を片付けた。
マリュリア「んーっ…疲れたーーーっ!」
クラーラ「お疲れ様ですわっ!」
マリュリア「クラーラは何描いてたのー?」
クラーラ「ふっふっふー…これですわ!」
マリュリア「これは…っ!私?!」
クラーラ「そうですわ!」
マリュリア「わーっ!!」
クラーラ「あげますわよっ!」
マリュリア「いいの?ありがとう、クラーラ。ずっと大事にするねっ!」
クラーラ「えへへっ、照れてしまいますわ//」
マリュリア「うふふっ…そうだ!」
クラーラ「?」
マリュリア「明日写真撮りに行こっか。」
クラーラ「写真…ですの?」
マリュリア「うん、2人の写真撮りに行かない?」
クラーラ「いいですわね!」
マリュリア「うふふ…じゃあ早速、外出していいか聞きに行かなくちゃ♪」
―内務卿執務室にて。
マリュリア「内務卿、失礼します。」
トイアー「マリュリアどうした?」
マリュリア「はい、イルシアの外出許可を得たいのですが、念の為内務卿にも相談しておこうかと思いまして」
トイアー「そうか、まぁ外出くらい良いと思うがな。ずっと狭い所にいても息が詰まるしな。ただし安全が確保されているならば、だ。何か手はあるのか?行き先は?」
マリュリア「特務隊を護衛につけます。行き先は中央市場にしようかと」
トイアー「あそこか…少し不安だな。復興が進んできたとはいえ、まだまだ途上だ。怪しげな業者がよく分からないものを売っているという話も聞く。不要不急ならば控えるべきだ」
マリュリア「そんな…」
トイアー「安全のためだ、理解して…そうだ!少し遠いが、東市場はどうだ?」
マリュリア「東市場?」
トイアー「ああ。ヴィラーディ東端の小さな海沿いの村にある。近くには花が咲き誇る丘もあってきれいだぞ。一度視察で行ったことがあるが、人も良くとても素晴らしいところだった
よ」
マリュリア「本当ですか!?ではそこに行かせてください!」
トイアー「あそこは海賊襲撃の被害もほぼなかったはずだ。駐留艦隊の拠点からも遠いし、総統閣下の許可が下りたら良いと思うぞ」
マリュリア「ありがとございます!」
トイアー「うむ、頑張れよ」
マリュリア「はいっ、失礼しました」
自信を得たマリュリア達は、廊下を歩き総統執務室へ行った。
扉をノックし入る。
マリュリア「総統閣下、失礼いたします」
クルーク「マリュリア君か、それにイルシアちゃんも、君たちが来るとは珍しい。何の用かな?」
マリュリア「クラー…イルシアの外出許可を頂きたく参りました」
クルーク「外出許可か…」
クルークはあまり良い顔をしなかった。
マリュリア「あまり良いように思われないのは理解しております。ですが、ずっと部屋の中にいても息が詰まりますし、飽きてしまいます。カルラディアのことをもっと知ってもらうためにも、どうか外出の許可を頂けないでしょうか?」
クルーク「うーむ…そうだな…。どこに行くんだ?」
マリュリア「東市場に行こうかと」
クルーク「東市場か、、あそこなら確かに比較的安全ではあるが…」
マリュリア「特務隊が常に警護に付きます」
クルーク「特務隊と言ってもな…どれほどなのかわからぬしな」
マリュリア「そうですか…」
クルーク「どうしても外に出ないといけないのか…?」
マリュリア「ど、どうしてもではありませんが…その……」
クルーク「んーまぁ、話はわかった。考えてはおくよ」
マリュリア「ありがとございます…では私達はこれで…。…行こっか、クラーラ」
クラーラ「はい…。」
マリュリア達は部屋へ戻った。
マリュリアはベッドに突っ伏し、イルシアはソファに腰掛けた。
マリュリア「だめっぽいなぁ…。ごめんね…」
クラーラ「いいのですよ、少し悲しいですけど…」
マリュリア「…明日…抜け出す…?」
クラーラ「え…抜け、出す…?」
マリュリア「うん、抜け出す。クラーラの事はしっかり守るから」
その時、会議室に繋がる扉の向こうから、咳払いが聞こえた。
マリュリア「っ!(聞かれた…!?)な、内務卿…?」
トイアー「そうだ、入っていいか?」
マリュリア「えぇ…どうぞ…」
トイアー「失礼する」
マリュリア「…内務卿、何かご用でしょうか?」
トイアー「いや、話が聞こえてしまってな」
マリュリア「…そうですか…」
トイアー「行ってくるといいと思うぞ」
マリュリア「はい……へ?」
トイアー「特務隊が常に警護に当たるのだろ、それに東市場なら大して危険もない。なんなら警備隊からも護衛を派遣するぞ?」
マリュリア「内務卿…」
トイアー「安心しろ、もし万が一何かあっても責任は私が取るから、好きにするといい。ただしマリュリア、自ら危険に首を突っ込むなよ?」
マリュリア「はい…いや、ですがそれは流石に…」
クラーラ「内務卿さん…ありがとうございますわ…!」
マリュリア「クラーラ!駄目ですっ!」
クラーラ「お姉ちゃん…」
トイアー「行かないのか?」
マリュリア「行きませんよ…。また日を改めます」
マリュリアはトイアーを部屋から押し出し、扉を閉めた。
マリュリア「…まぁ仕方ない!また今度行こうね、クラーラ」
クラーラ「そうですわね…わかりましたわっ!楽しみで今からどきどきわくわくですわ!」
マリュリア「うふふ…スイーツでも食べて気分転換しようか」
クラーラ「はいっ!」
二人は取っておいたスイーツを食べた。
それから数時間、マリュリアは仕事を片付けて、イルシアは内務卿執務室とマリュリアの部屋を行ったり来たり、暇つぶしをしていた。内務卿は時々かくれんぼに付き合ってあげたが、しゃがんで探すうちに膝が痛くなったのでやめてしまった。
すっかり日が暮れた頃。
マリュリアはイルシアがうとうとしているのに気付いた。
マリュリア「…クラーラ、眠そうだね」
クラーラ「えぇ…眠いですわ…」
マリュリア「そっか、今日はもう寝よっか」
イルシアは頷いてからベットで横になった。
マリュリアもイルシアと一緒に横になった。
イルシア「お姉ちゃん…おやすみ…」
マリュリア「おやすみなさい、クラーラ」
二人とも疲れが溜まっていたためすぐに深い眠りについた。夢の中でもスイーツを食べているのか、よだれを垂らしながら……
―――
翌日。
マリュリアが目を覚まし起き上がると、イルシアも目を覚ました。
マリュリア「おはよう、クラーラ」
イルシア「おはようですわ、お姉ちゃん」
ベットから降りると二人共に身支度を済ませた。
マリュリアは椅子に座りイルシアはソファーに座った。
・・・少しして、内務卿が会議室から部屋へ来た。
トイアー「二人共おはよう、」
マリュリア「内務卿、おはようございます」
イルシア「おはようございます」
トイアー「早速だけど総統がマリュリアを呼んでいたよ」
マリュリア「っ私?…わかりました、すぐ行きます」
そう言うとマリュリアは総統執務室へと向かった。
―中編②へ続く
(マリュリア・アルーシャ/ハル 寄稿)

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