-Side Story- イルシアとマリュリア 前編「出会い」
地球暦2195年3月。
帝国外相ジークハントが会談から帰還した。先の襲撃により荒れたままの帝都クルクラシア―
かつては帝都中で一際白く輝いていた総統官邸も、今や煤に塗れて黒く淀んでいた__
―――ヴィルディア 総統官邸―――
ジークハント「…以上が今回の交渉の顛末と結果になります」
クルーク「戦力制限か…、覚悟していたとはいえ、いざという時の事を考えると不安だな」
ジークハント「彼の国には『我が国の艦隊整備能力は本星のみ。他惑星は未だ開拓中である』と伝えています。あの宰相であれば容易に信じるかと」
クルーク「なるほど…流石マリウスが信頼を寄せるだけはあるな。」
ジークハント「ありがとうございます。技術開発の主力はハーデッシュベルトに移されるのが宜しいかと。あの星であればガスによるカモフラージュも可能ですから」
クルーク「そうだな。彼らの支援が来る前に、一度閣僚会議で意見を聞いてみよう。」
ジークハント「…それと総統。この娘についてなのですが……」
ジークハントの側で、彼が連れてきた娘が控えていた。
クルーク「その娘は…?」
ジークハント「はい。ショーゲツ島を発つ際に港で、"マズロアの巫女"なる者から、『訳は聞かずに引き取ってほしい』と言われまして」
クルーク「ふむ…、それでちゃっかり引き取ってきたわけだ」
ジークハント「ええ。巫女の話によると、この娘は高貴な出でありながらも国に居場所がなく、加えて宰相含めフルクの民に居場所を知られてはならないということなのです」
クルーク「それでその娘を連れてきて、我が帝国で匿おうと言う事でよいのか?」
ジークハント「左様です、閣下。この事を知る者はなるべく少なく留めておいた方が良いかと思っております」
クルーク「そうだな。新たな火種にもなりかねない…。ひとまずマリウスを呼ぼう」
クルークは秘書に内務卿を呼ぶよう指示した。
数分して内務卿トイアーが到着した。
執務室のドアが開く。
トイアー「お呼びでしょうか総統閣下、ジークハント殿。…おや、その子は?」
クルーク「マリウスよく来た、早速だか相談があってな」
トイアー「そこにいる娘の事でしょうか?」
クルーク「そうだ…」
クルークはトイアーに事情を説明した。
トイアー「ふむ、、、。お嬢ちゃん、僕はマリウス・シュトラス=トイアー。この国の内務卿だ。君の名前は?年はいくつなんだい?好きな食べ物はある?」
娘「ひっ……」
トイアーがあまりに勢いよく聞き倒すので、娘はびっくりしてしまったらしい。
クルーク「こらこらトイアー、そう問い詰めるな。ごめんよ、お嬢ちゃん」
娘「いえ、、」
ジークハント「きっと初めてきた場所で知らないおじさんたちに囲まれて緊張してるんだな」
クルーク「…そうだトイアー。お前の秘書に可愛らしい子がいなかったか?猫耳の。」
トイアー「マリュリアのことでしょうか?」
クルーク「そうそうマリュリアだ、あの子なら打ち解けられるかもしれんぞ?」
トイアー「確かに!呼んでみましょうか」
・・・
マリュリア「お呼びでしょうか、内務卿」
トイアー「よく来たマリュリア」
マリュリア「総統閣下、それに外務大臣殿まで…その子は?」
内務卿「か く か く し か じ か」
マリュリア「なるほど」
クルーク「マリュリア君頼んだよ、おじさん達じゃだめみたいなんだ」
こうして、マリュリアによるお嬢ちゃんなかよし大作戦が始まった。
マリュリア「私はマリュリア・アルーシャ。まーりゅとでも呼んでね。貴女は?」
少女「は、わ私は…、イルシア…イルシア・ファーラントですわ。マリュリア…さん?、その…どうぞ、よろしく…」
マリュリア「イルシアちゃん!これからよろしくねっ」
クルーク(ファーラント…?ファミリーネームに国名の一部を含んでいるのか…。王族の血筋か何かか?)
トイアー「しかしそのままの名前ではバレてしまう可能性がある…偽名を考えてはどうかな?」
マリュリア「偽名、、、うーん…。内務卿、何かいいのあります?」
トイアー「そうだなぁ、二人には姉妹のように仲良くなって、ここでの暮らしを楽しんで欲しいからな。ファミリーネームはアルーシャにしてはどうだ?」
マリュリア「姉妹かぁ…!」
マリュリアが目を輝かせる。イルシアもどこか嬉しそうだ。
マリュリア「イルシアちゃん、私たち姉妹だって!」
イルシア「っ…とても…うれしいですわ!」
マリュリア「私も!」
聞くところによれば、イルシアは大皇国を逃れた後およそ1年半、マズロアに匿われていたらしい。こうして心を落ち着かせて笑顔を見せられるのも、さぞや久しぶりのことだったのだろう。いや、もしかすると初めてなのかもしれない。それほどに彼女の笑顔は輝いて見えた。
マリュリア「あ、ファーストネームはどうしましょうか…?」
トイアー「マリュリアの好きにするといいよ」
マリュリア「うーん…。思いつきませんね…」
クルーク「偽名とは言えどファーストネームだ、しっかり考えて決めてやるといい、時間もまだあるからな」
マリュリア「総統閣下、ありがとございます」
トイアー「…ところでイルシアちゃん、年はいくつなんだい?」
イルシア「ひっ…あっ……」
マリュリア「内務卿何したんですか…」
トイアー「いやー…マリュリアが来る前にちょっと…カクカクシカジカ」
マリュリア「初対面でですか、そして怯えてる子に。」
トイアー「小さい子にどう接したらいいのか分からなかったのだ!」
マリュリア「それでもですよ!」
クルーク「はっはっは。2人とも夫婦みたいで楽しそうだな」
マリュリア「夫婦ではありません結婚する気もありません。」
トイアー「・・・(絶句)」
クルーク「失言だったな、すまない」
マリュリア「いえ、私も少し取り乱してしまいました。申し訳ございません」
トイアー「…で年は…」
マリュリアの冷たい視線がトイアーを刺す。
内務卿は「うがぁ…」と唸りながら、部屋の隅で座り込み、どんよりした。
マリュリア「イルシアちゃん、イルシアちゃんは今何歳なの?」
イルシア「今は七才ですわ」
マリュリア「七才…教えてくれてありがとねっ」
イルシア「姉妹ですし当然ですわ」
マリュリア「うふふ…。それと総統閣下、ファーストネーム、思いつきました!」
クルーク「ほう、何だい?」
マリュリア「はい、"クラーラ"にしたいと思います」
クルーク「クラーラ…いい名だ」
マリュリア「イルシアちゃん、貴女は今日から"クラーラ・アルーシャ"。嫌なら言ってね、無理強いはしないから」
イルシア「クラーラ・アルーシャ…嫌何てことありませんのよ、とっても嬉しいですわ!」
マリュリア「みなさんも、これから人目につく場所ではクラーラと呼ぶようお願い致します」
クルーク「うむ」
ジークハント「承知した」
マリュリア「内務卿?わかりました?」
トイアー「うにゅ…」
マリュリア「では私はイルシアと部屋に戻ります、」
クルーク「ちょっと待つんだマリュリア君、いくら姉妹と言えど外見がそうは見えぬぞ」
マリュリア「あ、確かにそうですね……、ではホログラムで肌の色を私よりにして、猫耳のカチューシャでも付けましょう」
クルーク「いいなそれ、採用!(ん?ホログラム?)」
ジークハント「しかし変装がバレた場合どうする気だ、?警護班か何かを付けた方が良いと思うのだが」
トイアー「ふふふふふふふ」
イルシア「…ッ?!」
ジークハント「?」
クルーク「何だ?急に」
マリュリア「…内務卿…?」
トイアー「あぁ、すまない。実はマリュリアをスパイとして育てるとともに、警務省陸警局所属特殊部隊、『特殊任務隊』の隊長にしておるのです。警護はマリュリア率いる特任隊にお任せを」
クルーク「ちょとまて、いろいろと初耳だぞ!?」
トイアー「極秘ですからっ」
トイアーがドヤ顔をし、マリュリアがそれを白い目で見る。
マリュリア「…私達はそろそろよろしいでしょうか?クラーラも疲れているようなので」
クルーク「うむ、」
マリュリア「それでは。…行こっか♪クラーラ」
イルシア「わかりましたわっ!」
マリュリアは自分の上着をイルシアに被せて部屋を出た。
トイアー「…まーりゅにイルシアちゃん、可愛かったぁ…うへ〜〜」
クルーク「…マリウス。」
トイアー「あっ…ゴホン、失礼」
ジークハント「にしても…ファミリーネームに国名を含んでいるということは、皇王の親族か何かなのでしょうか…?」
クルーク「やはり君もそう思うか」
ジークハント「ええ。バレてはいけないというのも、皇族ならばより納得がいきます。内務卿はどう思われますか?」
トイアー「...ん?なんて?」
クルーク「はぁ…マリウス…」
トイアー「失礼。マリュリア達を眺めていました」
クルーク「しっかりしないとマリュリア君を他の者の秘書にするぞ」
トイアー「・・・(絶句)」
クルーク「この件はこれ以上考えても分からないか…。はっ、最高裁判長なら何か分かるのではないか?」
トイアー「確かに、インザール卿は歴史や文化にお詳しいですから、何か良い見方を示してくださるやも」
ジークハント「ですね。後ほど私の方からご相談致しましょう。ところで、警務省の特殊部隊を動かすとなると警務大臣にもお知らせした方がよろしいのではないでしょうか?」
トイアー「警務大臣には私からお伝えしておきます」
クルーク「トイアー、ジークハント、くれぐれも内密に頼んだぞ」
二人「カ・ターバ!(了解)」
―――
マリュリア達が総統執務室を出て、マリュリアの部屋へ向かっている時のことだった。
マリュリアとイルシアに向かって、廊下を何者かが歩いてきた。
マリュリア「あれは内務卿第二秘書のエルゼだわ...イルシア、しっかり被ってて」
エルゼ「やぁ、マリュリア。調子は?それとその子は?見慣れない子のようだけれど。」
マリュリア「やぁエルゼ、調子はばっちりよ。この子はクラーラ、私の妹」
エルゼ「そう。こんにちはクラーラ。私はエルゼ・ナリータ、よろしくね。」
クラーラ「は、はいっ…よろしくお願いします」
エルゼ「あら、ちゃんとした良い子ね。」
マリュリア「あはは…ありがとう…。あの、そろそろいいかしら」
エルゼ「ところでなんでマリュリアの上着を被っているの?」
歩き出そうとしたところを引き止められる。
マリュリア「あぅ、…クラーラは恥ずかしがり屋だから。被ってると落ち着くらしいよ」
エルゼ「ふぅん、そう。妹って言ってたけれど、総統府に来ていいのかしら?…あぁ、内務卿のはからい?」
マリュリア「まぁ…うん、そうだよ」
エルゼ「総統府に連れてきたって事は、一人にできないって事よね。ならマリュリアが業務の間は私が預かるわよ。」
マリュリア「うーん…ありがたいけど…遠慮しとくね。あぁ、もう行かなきゃ」
エルゼ「何か預けられない理由でもあるのかしら?…って冗談よ、冗談!じゃあまたね。」
二人はエルゼと別れて急いで部屋に向かった。バレたのではないかと、バクバクしている拍動が繋いだ手から伝わってくる。
―――秘書マリュリアの部屋―――
マリュリアの部屋。無駄な物はほとんどなくマリュリアの机と多少の猫用道具、仮眠用のベット、それにソファーとテーブルがある。
マリュリア「ふぅ…あぶなかった…」
イルシア「…私がいると迷惑なのでしょうか…」
マリュリア「そんなことないよ、迷惑なんかじゃない」
イルシア「よかったですわ」
マリュリア「クラー…あー…イルシア。」
イルシア「クラーラと呼んでいただいて、、、いいえ、クラーラと呼んでほしいですわ!」
マリュリア「わかった!クラーラっ、」
クラーラ「なんでしょうかっ!」
マリュリア「今日からここで過ごす事になると思うけど…いいかな?」
クラーラ「もちろんですわ!マリュリアお姉さまも一緒ですのよね?」
マリュリア「うんっ、一緒だよっ」
クラーラ「嬉しいですわっ…!」
マリュリア「うふふ…そうだクラーラ、変装しよっか」
クラーラ「うーんとおめかしさせてくださる?」
マリュリア「あんまり目立つ服じゃだめだよ〜。えーっと…とりあえずこの服に着替えて、」
カルラディアにいる普通の少女が着るような服をイルシアに渡した。
数分して着替え終わった。
クラーラ「着替えましてよ」
マリュリア「わぁ、すごく似合ってる!それにとっても可愛いっ!」
イルシア「えへへ、ありがとうございます!」
マリュリア「それじゃぁ…肌の色を変えるけど…いい?」
イルシア「大丈夫ですわよ」
マリュリア「わかった…じっとしててね…」
マリュリアがホログラムの設定をする。
装置を起動するとイルシアの肌の色がマリュリアと同じ色になっていった。
イルシア「す、すごいですわ…これがカルラディアの技術力…」
マリュリア「早いうちに、猫耳型の装置を用意するわね。それまではこのカチューシャをつけておいて?」
イルシア「はい!」
猫耳カチューシャを身に着けさせた。
イルシアが鏡の前で、頬を染めた自分を眺めている。
クラーラ「素敵ですわ、どうもありがとう…」
マリュリア「いいよ〜、それにしてもほんっと可愛いし綺麗だよね!」
クラーラ「そ、そんなに褒められると照れてしまいますわ//」
とその時、クラーラがフラフラしているのに気が付いた。
マリュリア「どうしたの?大丈夫?」
クラーラ「えぇ、大丈夫ですのよ…、少し疲れただけですわ…」
マリュリア「(熱があるみたいだ…)そうだね、今日はいろいろあったもんね。ベッド使っていいよ、ゆっくり休んでね。あ、あと寝てる間は装置の充電をしておこっか」
クラーラ「はい、……ありがと、お姉ちゃん」
照れくさそうに小声でお礼を言い、イルシアがマリュリアのベットで横になる。
マリュリアは自分の椅子に座り仕事を片付け始めた。
クラーラ「…お姉ちゃんはお仕事ですの…?」
マリュリア「そうだよー、仕事を終わらせたら私も寝るよ」
クラーラ「わかりましたわ…おやすみなさい、お姉ちゃん…」
マリュリア「おやすみ、かわいいクラーラ。」
イルシアが眠りについた。
すぅ、すぅと可愛い寝息が聞こえる。
イルシアが眠ったことを確認すると、マリュリアは机の引き出しから何かを取り出した。
マリュリア「・・・・・」
特務隊向けに特注で作られた銃火器のうちの一つ、拳銃の手入れをする。マリュリアはこの作業が好きだった。黙々と作業をすると、寂しさを忘れられるから。でも今は、イルシアという家族がいる。気持ちもいつもとは少し違って、嬉しさが顔に出ていた。
さて、その銃火器の話だが、ガミラスやカルラディアでは珍しい実弾を使った銃火器である。
一つの弾倉へ12発の弾薬を装填し、これを3セット準備する。
準備した弾倉のうち一つを拳銃に装填するのだ。
手入れが終わると、マリュリアは電文式の暗号通信器を取り出し、特務隊作戦本部へ通信を入れた。
マリュリア・通信器「(内容)SH、こちらハル1。緊急任務通達。期限不明。目標設定、仮称クラーラ・アルーシャ。画像送信。12時間交代し常時警護、監視。警戒態勢レベル3であたれ。」
SH・通信器「(内容)ハル1、こちらSH了解。全員に通達。以下中略。各員細心の注意を払い任務にあたれ。通信終了」
***
※SH=特殊任務隊作戦本部 ※ハル=特務隊コードネーム
※警戒態勢レベル=1注意、2要注意、3火器使用可能性あり、4戦闘用意、5各自判断にて行動可
***
マリュリアが通信を終わった時、隣の会議室からかすかに物音が聞こえた。
内務卿だろうと思いながらも、多少の不安があったため確認することにした。
マリュリア(内務卿だろうけど…エルゼかも…探りでも入れてるのかな…クラーラを起こさないように…。)
自室と会議室とが繋がっている扉の横に、拳銃を持って立つ。
すると扉をゆっくり開けて何者かが入ってきた。会議室から光が差し込む…
すかさずマリュリアが何者かを勢いよく押し倒す。
そして銃口をその頭に向けた時だった。
トイアー「ちょっちょっ!やめてくれマリュリア、私だトイアーだ!」
マリュリア「…内務卿っ…失礼致しました」
内務卿から離れた。
トイアー「大丈夫だ、私こそ無言で入ってしまってすまなかった…」
マリュリア「いえ…ところでなぜ私の部屋へ?何かご用でしょうか?」
トイアー「いやー…用は特にない…」
マリュリア「…それはどういうことでしょうか内務卿」
笑顔で銃口を内務卿に向ける。
トイアー「あぁ、話があってきたんだ、うんうん、そうそう。」
内務卿、焦る。
マリュリア「話ですか…ご要件は何でしょうか」
トイアー「えーと、あれだ、そのー」
マリュリア「何でしょうか」
マリュリアが冷たい目で内務卿を見る。
トイアー「い、イルシアは、どうかなと…」
マリュリア「・・・」
トイアー「あ、あとあれだ、マリュリアの様子を見に…な?」
マリュリア「内務卿…?」
トイアー「はい…」
マリュリア「いい加減にしてくださいね。」
トイアー「すみませんでした」
マリュリア「はい、他になにかありますか。」
トイアー「なにもありません」
マリュリア「わかりました。」
扉を勢いよく閉めてしまった。
マリュリア「っ!(クラーラ起きちゃったかな、大丈夫かなっ?!)」
イルシアの方を見る。
クラーラ「すぅ…すぅ…」
マリュリア「よかった…次から気をつけなきゃ…」
マリュリアは引き出しに拳銃をしまいソファーで横になった。
―――
翌日。
マリュリア「…ん…ふわぁー…。っ!クラーラっ!」
クラーラ「…すぅ……すぅ…」
マリュリア「まだ寝てるか……。ベットじゃないからちゃんと寝れなかったー…、髪の毛が…。」
マリュリアはソファから起き上がり、櫛で髪をとかした。
イルシアはまだ起きていない。
マリュリア「クラーラが起きる前に朝食でも貰いに行こうかな。そういえば嫌いな食べ物とかあるのかな」
マリュリアはクラーラの食の好き嫌いを考えながら食堂へ向かった。
マリュリアが部屋を出てすぐイルシアが目を覚ました。
イルシア「んーっ……。お姉ちゃんおはようございます…、お姉ちゃん…?……お姉ちゃんどこ…?」
マリュリアを探す。
イルシア「お姉ちゃんどこー…。」
部屋の扉を開けて廊下に出てしまった。
廊下の先からマリュリアが歩いてくる。
イルシア「お姉ちゃんっ…!」
マリュリアが気づく。
マリュリア「はっ!クラーラだめ!」
イルシア「えっ…?」
朝食から手を離し走ってイルシアの元へ行き、イルシアを抱き上げて部屋に入った。
マリュリア「クラーラ、変装無しで外に出るのは危ないんだよ」
イルシア「ごめんなさい…」
マリュリア「一緒にいなかった私も悪いけど、次から気を付けてね」
イルシア「わかりました…」
マリュリア「まぁひとまず変装しよっか。」
イルシア「はいっ…」
マリュリアがホログラムを起動し、猫耳カチューシャをイルシアに身に着けさせた。
マリュリア「これで大丈夫。多分クラーラが行ける場所はこの建物内だけだけど、安全とは言い切れない。常に私といてね」
クラーラ「わかりましたわ」
部屋の扉がノックされる。
トイアー「マリュリア、大丈夫か〜」
廊下から内務卿の声が聞こえる。
マリュリア「内務卿!大丈夫ですよ」
扉を開ける。
トイアー「よかった。イルっ…クラーラも無事かな?」
クラーラ「あっ…ひっ…はいっ…大丈夫ですわ…。」
マリュリア「内務卿…怖がられてますよ…」
トイアー「そのようだな…ははは、、」
マリュリアがトイアーに耳打ちをする。
マリュリア「内務卿、今晩お話があります。会議室で待っていてください」
トイアー「わかった。では私は失礼するよ。クラーラをよろしく頼む」
トイアーが部屋を出て扉を閉めて行った。
マリュリア「…クラーラ、あの人怖いの?」
クラーラ「えぇ…ちょっと…」
マリュリア「そっかー…本当はいい人なんだよ、私の恩人でもあるしね♪」
クラーラ「恩人、ですの?」
マリュリア「そうだよ。昔死にかけてた私を助けてくれたんだ。あの人は大切なモノの為には一生懸命だから」
クラーラ「そうだったのですね…私酷い事をしてしまいましたわ…」
マリュリア「大丈夫だよ、クラーラもたまにはあの人とも仲良くしてあげてね。あれでもクラーラの事を心配してるから」
クラーラ「わかりました。頑張りますのよっ!」
マリュリア「頑張る分にはいいけど無理はしないでね」
などと話しているとまた扉がノックされた。
小声で会話する。
マリュリア「(次は誰…?、…はっ!)クラーラ、気を付けて。」
クラーラ「わかりましたわ」
マリュリア「…どちら様?」
エルゼ「マリュリア?私よ、エルゼよ。大きな声が聞こえたけど大丈夫かしら?」
マリュリア「あ、うん大丈夫だよ、」
エルゼ「そう、それなら良かったわ。入って良くて?」
マリュリア「あちょっと待ってね、、、クラーラ、会議室に行ってて」
クラーラが小走りで会議室への扉に向かう。不安げにマリュリアの顔を見ながら、部屋に入った。
エルゼ「まだかしら〜?それとも何か隠し事〜?」
マリュリア「…ごめんなさいね、今開けますわ」
扉に手をかけた時、廊下から声がした。
トイアー「エルゼー?どこだー?」
エルゼ「ちっ…あらごめんなさいね、内務卿に呼ばれてしまったわ。また後でね、マリュリア」
エルゼはどこかへ行ってしまった。
マリュリア「今まで部屋にまで来ることはなかったのに…」
クラーラ「…お姉さま、大丈夫ですか?」
マリュリア「大丈夫…クラーラは?」
クラーラ「私は大丈夫ですわ、少し怖かったですけれど…」
マリュリア「そっか…クラーラ、エルゼには気を付けておいてね、何か探っているようだから」
この日はこれ以降、何も起こらずに夜を迎えた。
―中編へ続く
(マリュリア・アルーシャ/ハル 寄稿)
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