シーズン1最終話 我が航路に見た光
観測手「まもなくカラーディ星系に入る。」
シャーフ「了解した。……長い戦いでしたね…閣下。」
クルーク「全くだ。海賊から始まり、カンツの駐留艦隊、ティーラー配下の大艦隊……、苦労を続けた9年だったが、ようやく終わったな。」
航海長「間もなく、イスヴィア軌道、抜ける」
観測手「艦隊前方、友軍艦艇多数展開。」
シャーフ「拡大しろ!」
モニターに拡大投影された艦影は30隻余り。本国に残していた宙警局艦隊であった。
クルーク「ベルメイに宙警局……出迎えか!」
ーーー宙警局艦隊ーーー
艦隊司令「英雄の凱旋だ。祝砲、撃て!!」
先行し帰還したUD隊から、フルク決戦における勝利の報を受け取ったトイアーの計らいにより、宙警局艦隊は、帰還する艦隊を出迎えるべく準備を整えていたのだった。
時を同じくして、戦争犯罪容疑で逮捕されているティーラーと皇王は、裁判までの間勾留される為、拘置所へ移送されている途中であった__
警務省職員「進め!」
ティーラー「貴様!吾輩を押すとは何事か!」
警務省職員「良いから進め!余計な怪我したくなければな!!」
国民「居たぞ!皇王とティーラーだ!!!」
陸戦隊から警務省へ引き渡しの際、移送用の車両の手配に手違い(後の調査で故意と判明)が発生し、一時的にティーラーと皇王が衆目へとさらされる事となってしまった。
散々国を滅茶苦茶にされた臣民の恨みがティーラーと皇王へ向かぬ筈も無く、手当たり次第に石や様々な物が投げられた。
ティーラー「うっっ!……ふざけるな…ふざけるなよ……!!吾輩は相国、ティーラーなのだぞ!!分を弁えんか蛮族共!!」
皇王「よせ、ティーラー。我らは既に敗者。此れを甘んじて受けろとは言わぬが、少し気持ちを落ち着かせよ。」
ティーラー「……」
陸戦隊員「無抵抗の人間への暴行を辞めさせろ!!」
警務省職員『我々は、警務省陸警局である。無抵抗の人間に対する暴行・投石を直ちに中止せよ!従わない場合は逮捕する!!繰り返す!!無抵抗の人間に対する暴行・投石を即刻中止せよ!!』
宇宙港に接岸し、市街の様子を見ていたクルークは、ティーラーや皇王に対しての罵詈雑言、暴行の様子を見ながら、臣民達にそれほどの苦しい思いをさせてしまった事を悔い、改めて臣民の豊かな生活の為に動き出すことを決意した。
* *
フルク本土決戦終結から1週間。
カルラディア帝国最高裁判所大法廷では、ハルキ・ウィンブライ・インザール最高裁判長の下、本戦争の最終的な解決の為の裁判が開かれる事となった。
インザール「戦勝国の権利として、軍事裁判を行う。しかしながら、カルラディアだけでなくフルクファーラントにとっても最大限公平性を保った裁判を執り行う事を誓う」
最高裁判長、ハルキ・ウィンブライ・インザールが軍事裁判開始を宣言する。拘束されているのはフルクファーラントの宰相、クーゲルン・デ・ティーラーであった。
ティーラー「だれが貴様の処罰なんか受けるか!馬鹿者!」
インザール「被告人。法廷侮辱罪を追加しても構いませんが、貴方にはフルクファーラントからもその律令に反するとする告発が多数届いております」
傍聴席から相国へ怨恨を込めた怒号の雨霰が降り頻る。最高裁判長は「静粛に!」と一喝し、それからフルク人裁判官が「傍聴席の方々は安心して下さい、罪に相応な待遇を被告人に与えます」と宥める。
罵詈雑言が起こる事は想定した通りであり、新フルク政府右大臣派の検非違使から選抜した裁判官と裁判長は示し合わせていた。されど、公判にて事実を明らかにするのを優先するものとして公判が始まった。
インザール「被告人には、“平和愛好諸国民の利益並びにフルクファーラント国民自身の利益を毀損”として、A級戦犯の平和に対する罪及び、C級戦犯の人道に反する罪が挙げられる」
インザール「また、通常犯罪として職権濫用と恐喝、暴行、強制猥褻、殺人等が告発されているが、フルクに於ける遡及に関しては最高裁として他の独立国家でのカルラディア法の適用は、星間国際秩序の尊重に欠けるものであり総統府の要望を棄却し、本戦役での戦争犯罪人として被告人の罪を計るものとする」
続けて、戦争犯罪の証拠や弁護士による嫌々ながらの弁護があるも、一貫してティーラーは「皇王により認められた権利だ、貴様らが幾ら偉くとも裁きを受けさせる事自体が不敬である!」として告発される罪業全てに開き直っている。
だが、最高裁判長は「ええ、貴方の権威の根拠が皇王であるならば既に喪失したものと言えます」と答えると、「既に皇太子による新政権が組織され、カルラディアとの折衝や内政を取り仕切っております」と続けた。
ティーラー「何を…皇太子が吾輩を裏切るはずがない…。貴様は元教員と聞くじゃないか。法律の事を知らない、単なるペテン師なのではないか?」
インザール「いいえ、私は"カルラディア帝国"より正式に最高裁判長として信任を受けた者です。私の職権の根源は国としての機構であり、総統ではありません。故に戦勝国を代表して、そして貴方の被害にあったカルラディアとフルク、マズロアの民の代表として貴方を裁きます」
ティーラー「え…?」
インザール「(私自身は総統に忠誠を誓い、最大限尊重し、国作りにこれからも協力するつもりではあるのだけど……後が怖いなぁ)」
この裁判で、カルラディアは“あくまでも”法治国家であるとして、その君主や公卿でさえ法により裁かれる事を示した。更には、ガミラス時代に於ける各領邦国家への判例を基にした“マゼラン国際法”を参照して裁判が続けられる。
裁判は数時間に渡る相国とその配下の罪状の列挙の後に、最高裁判長により判決が下される。
インザール「本件の審理はこれにて結審します」
傍聴席が静まり返る。
インザール「被告人は証言台へ」
ティーラー「フン、こんな裁判は不当だ!今すぐにでも貴様の首をかっ割いてやるわ」
インザール「(懲りないな…)被告人に対する、戦争犯罪について、次の通りに判決を下します」
ティーラー「不成立と言っているだろ!俺は無罪だ!」
インザール「主文、被告人を"公開処刑"とする。罪なき人々を自らの欲望のために弄び、国の崩壊を招き、諸国民を恐慌の底に貶めた。他の事例と比較出来ない程甚しく重大な戦争犯罪人だ」
主文後回し撤回による、刑の宣告。
インザール卿が、否、カルラディアとフルクファーラント両国民の怒りを代弁したような宣告であった。処刑の宣告から執行まで3日を設け、裁判にて提示されたあらゆる戦争犯罪をメディアが流した。
裁判後、総統へ改めて裁判の報告を行うべく執務室を訪れていたインザール卿は、クルークから自らの持った疑問に付いて投げかけられていた。
クルーク「インザール卿、貴方は職権の根源は国であり総統でないと言った様だが…まさか裏切るとでも言うのか?」
インザール「いいえ。閣下が民の為の政治を為されるならば、私も最高裁判長として最大限忠誠を尽くしましょう。しかし、道理にも法にも基づかない唯の男に堕ちてしまったその時には…法と忠義を以て貴方を裁きます」
クルーク「だから気に入った、インザール卿。これからも任せるよ」
インザール「はい、総統閣下」
こうしてフルクファーラント相国の裁判は終わり、処刑へと移る__
* *
裁判から3日後、総統府前の広場に設置された絞首台前には、多くの人だかりが出来ていた。
アナウンサー「先日の裁判によって死刑を宣告された、フルクファーラント大皇国元宰相、ティーラー死刑囚の死刑が、本日予定通り行われる事に成りました。公開処刑場には多くの人だかりが出来ており、訪れた人からは『これで平和が訪れると思うと清々しい』『1人の人間によって国が滅茶苦茶にされた。死刑は当然だと思う』など様々な声が聞こえてきました。また、総統府からの公式発表によりますと、本日の公開処刑は、総統親衛隊保安警察主導の元で行われるとの事です。」
午前10時、公開処刑場にティーラーを連れて、親衛隊保安警察官が複数名登壇した。
保安警察長官「只今より、フルクファーラント大皇国元宰相、クーゲルン・デ・ティーラー死刑囚の公開処刑を行う。」
保安警察官「何か言い残した事はあるか」
ティーラー「言い残した事だとぉ?あぁ、あるさ!!よく聞け愚民ども!!!貴様らの浅はかなる行いで、シュリウシアの全ての均衡が崩壊するのだ!!!!自らの引き起こす業火に呑まれて滅びるがいいさ!!!!!」
負け惜しみとしか言いようの無い言葉を声高に叫んだティーラーに対し、広場に集まった臣民達から一斉に罵詈雑言が投げ掛けられた。
保安警察長官「静粛に!!ティーラーを縄にかけろ!」
言葉の嵐が吹き荒れる広場を、保安警察長官が一喝し、ティーラーの首に縄をかける。
後ろ手に手錠をかけられ、更に両脇を押さえられているティーラーは必死に逃げようと藻掻くものの、禄に運動もせずにいる中年と日々鍛えている青年とでは力の差は歴然であった。
ティーラー「縄を外せ!私は一国を取り仕切った相国ぞ!!そうだ!この縄を外せば貴様らの為に国を舵取ろうでは無いか!悪くない話だぞ!!な!な!!」
正に命乞いをしているティーラを余所に、保安警察長官から無慈悲な「執行」と言う言葉が放たれた。
"バタン!"という音と同時に、ティーラーの足元の床板が開き、体が宙ぶらりん状態になる。
バタバタと藻掻きながら何とかして逃れようとするものの、次第にその動きも弱くなり「ぐがががが」と、最早言葉にもならない声を上げながらティーラーは息絶えた。
首縄を切り、"ドサリ"と地面に落ちたティーラーの体を、検死官が検死し、死亡が確認され、その場に集まった聴衆やマスメディアに対し、執行完了が宣告され、フルクファーラント大皇国元宰相、クーゲルン・デ・ティーラーの公開処刑は幕を閉じた。
それから1週間
クルークは、トイアーとマリュリア、イルシアを連れ警務省へ訪れていた。
事の発端は勾留中のシアクヴァヌスⅡ世が「この国にフルク人が保護されている」と言う話を聞いた事から始まった。
「政争や権力争いから遠ざける為にマズロアに預けていた愛娘のイルシアが生きている。」
この事を知ったシアクヴァヌスⅡ世は、看守に対し保護されたフルク人との面会を希望する旨を伝え、最終的に警務省長官と内務卿、総統からの認可を経て実現した面会であった。
イルシア「あの…お義父様、私に会いたいと仰られた方は、どなたなのでしょうか?」
クルーク「それはまぁ…、会ってからのお楽しみ……いや、お楽しみと言うのも変な話だな。」
イルシア「(……もしかして)」
警務省職員に通された面会室に入ると、そこには既に呼び出した男、シアクヴァヌスⅡ世が彼女達の到着を待っていた。
イルシア「…!お、お父様!!」
シアクヴァヌス「おぉ、イルシア…。またこうして会える日が来るとは…。」
刑務官「面会時間は30分です。面会終了まで我々は特に手出ししません。ごゆっくり。」
シアクヴァヌス「あぁ、感謝する。」
イルシアが久し振りの父と何を話そうか悩んで居る間に、シアクヴァヌスが謝罪の言葉を述べ始めた。
シアクヴァヌス「イルシア、辛い思いをさせてしまいすまなかった…。いくらお前を政争から遠ざける為とは言え、家族と離れ離れにさせるなど…、父として申し訳なく思う。」
イルシア「お父様…、どうか謝らないで下さい。お父様が私の事を大切に思って下さっていたことも、私の為にして下さったと言うことも十分に伝わっていますから。」
シアクヴァヌス「イルシア…」
イルシア「それよりもお父様、聞いてください!私、お姉ちゃんが出来たのです!」
イルシアはそう言うと同行しているマリュリアの腕を取り、シアクヴァヌスⅡ世の正面に共に座り直す。
イルシア「この人が私のお姉ちゃん、マリュリアさんです!」
シアクヴァヌス「……フッ、ハハハ!!そうかそうか!異国へ拾われ、果ては姉ができるとは!!……幸せそうだな、イルシアよ。……マリュリア、さん、と言ったな」
マリュリア「…はい」
シアクヴァヌス「良い目をしている。…立場も何もかもを無くした余だ。何かを言えるでも無い。無いが、イルシアの父として一つだけ伝えたい。…どうか、この娘を宜しく頼む。余は、イルシアが健やかに生きてさえくれれば、何も悔いは無い。」
マリュリア「…分かりました。」
イルシア「お父様お父様!実は私、今色々な事を学んでいるのです!お義父様のお計らいで家庭教師の先生を呼んで頂いて―」
トイアー「どうやら、危惧していた事は起こらないみたいですね。良かった」
クルーク「陛下が喋りだした時点で危惧していた事は起こらないと思ったよ」
トイアー「なぜです?」
クルーク「まぁ、なんだ。子を持つ父としての勘だよ」
刑務官「失礼、間もなくお時間です。」
シアクヴァヌス「おぉ、そうか。時間が過ぎるのは早いものだな。……、クルーク総統、少しいいか?」
面会終了の時間が迫る中、最後にと言わんばかりにシアクヴァヌスⅡ世がクルークと話を始めた。
クルーク「なんでしょうか?陛下」
シアクヴァヌス「そなたに先に言っておくべきだったな。イルシアを保護してくれたこと、心より感謝する。もう会うことは出来ないと思っていた娘。心から楽しい時間だった。それと、この娘を養子に迎え、勉学まで受けさせて下さった事に心から感謝する。」
クルーク「…我々は、貴方の国がした事を許す事はないでしょう。生ける人間の尊厳を踏み躙った。ただ、先日の公開処刑で全ての体裁は整えました。同じ娘を愛する親として、貴方の最終的な処分が決まるまでの間ではありますが、彼女には貴方との面会を自由に行える様に整えています。」
シアクヴァヌス「なんと…、心から礼を言う。ありがとう。」
対話を終えると、タイミングを見計らっていた刑務官がシアクヴァヌスⅡ世の肩を叩き、退出を促し、それに併せクルーク達も退室する。
帰宅後、イルシアに対して改めてシアクヴァヌスⅡ世との面会が自由に行える事を伝えたクルークは、嬉しそうにはしゃぐイルシアを眺めながら、シアクヴァヌスⅡ世の『彼女が健やかに生きる』という願いを叶え続けようと決意した。
* *
シアクヴァヌスⅡ世との面会から5日後、クルークとジークハントらはショーゲツ島へ出向き連合軍として共に戦った仲間のお偉方と共に、戦勝記念会談に訪れていた。
クルーク「皆様、先日の戦いではご助力頂き、誠にありがとうございました。無事にフルクファーラントの討伐ができた事、心より御礼申し上げます。宰相であったティーラーは我が国内にて処刑を行いました。前皇王シアクヴァヌスⅡ世については、身柄を拘束中であり、処分については現在検討中であります。」
戦役に於いて最前線を張り、戦いを主導したカルラディア帝国から、ロドルフ・クルークが代表し、出席者一同へ謝辞を述べた。
その後直ぐに、マズロア大君であるミナト・マズロアから領地分配に関する話が始まった。
ミナト・マズロア「みな、本当に助かった。感謝を申し上げる。さてついでに元フルク領域を参加していただいた各国へ編入しようと思う。まずこの戦いで1番功績を挙げたカルラディアの諸君。君たちにはフルク領の半分を与えよう。ワンダスには残りの半分の内もう半分を、そして残った半分の領地を他の国に分け与える。依存はござらんか?」
クルーク「マズロアは領土を得ることはせぬ…と?」
ミナト・マズロア「我らは各地を転々とする身故、領土を持っても持て余すだけ。されど、全面的な貿易の優先権と各地域の準惑星を幾つか荘園として頂ければと」
クルーク「その位でしたら構いますまい」
すんなりと領地分配に関しての話し合いも終わり、会談は一気に立食会場へと様変わりした。
ウェイターからワイン(の様な物)を各々が受け取り、ミナト・マズロアが「では」と言いながら音頭を取る。
ミナト・マズロア「新たなる時代に」
首脳陣「「「新たなる時代に」」」
ミナト・マズロアの音頭に併せ、各首脳陣もグラスを掲げ乾杯する。
会談と立食会の成功は、カルラディアの地位を確固たる物にするのと同時に、圧政を敷いてきたフルク一強の時代から、シュリウシアが変わり始めた事の証左に他ならなかった__
後日、ヴィルディアに残された皇王は、警務省庁舎内の政治犯その他重要犯罪人用拘留施設にて当面の間留置される事が決定し、実質的な終身刑が言い渡された。
* *
首脳会談兼立食会から数日。
間もなく建国から10年を迎えようという年の瀬も近づく頃、クルークは内務卿トイアーに、ある打診をしていた。
クルークからトイアーに示された内容はこうだ。
「我が国の領域は格段に広がった。しかし、現在の行政制度ではこの状況に対応しきれず、広大な領域を治めるための新たな制度を考案する必要がある。」と
詰まる所、現状から刷新した行政制度を設けたいという話であった。
トイアー『なるほど…。閣下の構想などはお有りで?』
クルーク「すまんが、私はあまりこういった分野には明るくなくてな…。君に一任したく思っているんだが、構わないかな?」
トイアー『承知しました。必ずや閣下のご期待に応えましょう。』
クルーク「すまんな。急な話ではあるが、年明けの建国10年祭に間に合わせてほしい。」
トイアー『かしこまりました。行政局総出で取りかかりましょう。』
こうして、内務卿指示の下で総統府の各行政局が動き出した。
総務省麾下の地方自治庁、法務省麾下の出入国管理局、そして交通省が中心となって制度を設計。
その後、総統府法制局によって「新行政区画の設定及び地方自治に関する法律案」が取りまとめられ、カルラン暦10年1月28日、帝国議会の承認を経て本法律が施行されることとなった。
時は遡り、クルークがトイアーへ新行政制度の打診をした直後、総統府幹部が総統執務室へ報告があると訪れていた。
幹部「突然申し訳ございません、閣下。UD隊司令から閣下に対してご報告したい事があるとの事で。」
クルーク「急を要する事か?」
幹部「隊司令の態度から見ても可能性は高いかと」
クルーク「承知した。直ぐに呼んでくれ」
クルークからの指示を受け、近くに待機させていたUD隊司令が総統執務室へとやってきた。
UD隊司令「突然で申し訳ありません閣下。しかし、これは直接報告すべき事と思いまして」
クルーク「何があったと言うのだ?」
UD隊司令「実は私断層内部にある艦影を発見いたしまして」
クルーク「なんだ?難破船か何かか?」
UD隊司令「いえ、艦様から察するに、恐らくガミラスのガイペロン級と思われます。」
クルーク「ガイペロン級…、空母か!!でかした、隊司令!サルベージは可能かな?」
UD隊司令「近海の断層まで曳航済です。ご指示があれば直ぐにでも」
クルーク「ならば、稼働可能な全潜層艦を動員し、直ちにサルベージせよ。」
UD隊司令「はっ!」
フルク討伐の際、フルク領内の次元断層を航行していた潜層艦隊は断層内で空母と思われる艦影を発見、ティーラー及び皇王の移送中に近海へと曳航していた。
クルークの指示を受けたUD隊は翌朝新発。月軌道上にてサルベージに成功し、無事ガミラスのガイペロン級を確保するに至った。
サルベージされた空母は、一時的にヴィルディア宙軍港へ移送され、クルークによる確認を経て、ハーデッシュ・ベルトの技術開発局へと解析に廻される事となった。
後の調査で判明した事だが、サルベージしたガイペロン級は計器等の情報から3年前に戦闘の末、緊急ジャンプを強行、偶然の事故で次元断層へ迷い込んでしまい、救助も見込めぬまま断層内を漂い続けていたとの事。
艦体に多少の腐食はあったものの、解析作業に支障は無く、最終的に総統指示の下、カルラディア空母艦隊の1番艦として生まれ変わることが決まった。
* *
航海長「間もなく第一衛星イスヴィア。着陸予定座標確認。此れより着陸する」
年が明けて直ぐのこの日、帝国宇宙軍の小型輸送艦には、技術開発局長シュティーア・シャーフ及び科学技術庁長官ヴェルタ・フォールド・シナノをはじめ、軍事、物理学、化学、生物学、地学、建築学、歴史学、考古学といった各分野の専門家が搭乗していた。彼らの向かう先は、首都星ヴィルディアの第一衛星、イスヴィアだ。
輸送艦着陸後、船外服を着用した調査隊は、目的の建造物内部へと侵入していった。
シャーフ「こちらが、我らがこの星系に到達した時に発見したイスカンダルの造船基地と思われる遺構です」
考古学者「おぉお…!噂には聞いていたが、まさかこれほどのものが遺っているとは!!」
シャーフ「現在我が軍は、ここを再生し、極秘の工廠としたく考えております。その第一歩として今回の調査では、事前にお伝えしたように(1)技術的な情報の入手、(2)イスカンダルとカラーディの関わりや歴史・文化的側面についての考察、(3)施設復元復旧工事のための構造分析、この3点を主目標として行ってまいります。長期の調査となることが予想されますが、研究者の皆様方には何卒ご協力をお願い申し上げます」
そう、この星にはイスカンダルのものと思しき基地があるのだ。帝国がここまでの発展を遂げた大きな要因である"イスカンダル純製ゲシュ=タム・コア"、それを見つけたのはまさにこの場所である。
ヴィルディアへの入植時、めぼしいモノは粗方回収したが、今回はモノではなく場所そのものに注目した調査となる。
考古学者「これは…イスカンダル文字!読める…読めるぞ…!!」
シャーフ「君は確か…インザール卿の教え子だったか」
考古学者「はい、シャーフ長官!ご無沙汰しておりました。いやしかし、ここの壁はすごいですよ、少し調べただけでもイスカンダル技術のあれこれが綿密に描かれていて…特にこれなんか、"ゲシュ=タム・エネルギーを転用した武器"だそうですよ!」
シャーフ「ゲシュ=タム・エネルギーを転用した武器?…実は、我が技開局でも似たような理論を使った兵器を研究中なのだが……。これはそれに使えるかも知れんな。残らずデータを押さえておいてくれ」
考古学者「承知しました!」
これは、データ取得後に気がついた事ではあるのだが、そこの記述の最後には、この様な事が書かれていた。
"過ぎたる力は、身を、宇宙を滅ぼすことになる。この様な兵器は、決して存在してはならなかった"と…
地質学者A「この基地は、どうやら天然の洞窟を改造して造り上げた様ですね」
建築学者「そのようですね。人工的な構造が一部にしか見当たらない」
生物学者A「イスヴィア…もしかするともともと大気と水があったのかも。植生の痕跡が見られます」
地質学者B「先生方!基地の外に面白いものが!」
・・・
建築学者「これは…土と植物の繊維を混ぜて固めた壁か?」
地質学者B「近くに水流の痕跡がありました。水底の地質に、その壁のものと同一の植物が見られました」
基地の近くにあったその遺構は、高さ3メートル、半径5メートルほどのドーム状のものであった。とはいえ、三分の一ほどは崩れており、残った部分も強い日光に照らされた表面が風化していた。
考古学者「ドームの内部へ通じる通路があったため調査したところ、内壁には巨大生物や異星文明との戦いのような図案が描かれていました。あとこれは欠けていて一部読み取れなかったのですが、イスカンダル文字で"ーシャ"という記述も見つかりました。イスカンダル文字はこれだけのようです」
生物学者B「それから、人のものと思しき骨も」
歴史学者「どうやらイスカンダル人の塚のようだな…」
さらに基地周辺から、重要な手がかりとなる情報が発見された。
化学者「基地周辺に複数見られる小規模なクレーターの内部を調べたところ、火薬に使用される物質が検出されました」
物理学者「風化の影響もあり正確には判断できないのですが、クレーターの形状からして、おそらくヴィルディア方面から発砲された実体弾の着弾痕かと」
シャーフ「ふむ……。では皆さん、宇宙線の影響も考えて、本日の調査はここまでとしましょう。帰投後、調査内容の報告書の取りまとめをお願いします」
報告書にまとめられた内容はこうだ。
―かつてイスヴィアには、ヴィルディアと同じような自然が広がり、両星には異なる文明があった可能性が高い。ある時イスヴィアに、イスカンダルのシェヘラザードが不時着。イスヴィア人は乗っていたイスカンダル人を助け、その見返りとしてイスカンダルの技術を与えられた可能性が非常に大きい。その後、何らかの原因により両星間の武力衝突が勃発。結局イスヴィアは猛攻を受けて滅び、その際の破壊により今のような環境となったと推察される―
この後も幾度か調査が続けられ、帝国に有用な技術や歴史に関する資料が集められた。
* *
カルラン暦10年2月22日
この日、ヴィルディア帝都クルクラシアにて、建国10年記念祭が盛大に行われていた。
9年と云う長い月日を戦い抜き、遂に自由を手に入れたカルラディア帝国臣民達は、今日まで無事生き抜けた事、戦いに勝利で幕を閉じる事ができた事実に多いに喜び、正に国を挙げてのお祭り騒ぎとなっていた。
夕刻、閉幕宣言と共にクルークが演説をすると言うことで、総統府前の広場には多くの臣民や各国国営放送などのマスメディアが詰めかけていた。
マイクの電源が入り、会場にハウリングが響き渡ると、聴衆が一瞬のうちに静まり返る。軽く深呼吸をしてから一拍ほど置いて、クルークは聴衆へと、静かに語りかけ始めた_
「…我らはかつて、放浪の民であった。
滅びゆく
……あれから、早くも既に十五年。
五年に渉った長く苦しい放浪の末、辿り着いた
しかしこの場所でさえ、平穏な土地とは言えなかった…。
圧政を敷く者等によって、我らの汗と血と、涙の結晶は、一夜にして瓦礫の山へと変わり果てた。
あの絶望を、我らは忘れ得ぬだろう…
それでも、我らは前を向いた。
また日が昇り大地を照らす、明日が来ることを信じて。
如何に苦しくとも、我らは上を向いた。
涙を堪え、より大きな世界に理想を求めて。
…そうして掴んだ星々が、いまこの全天に輝いている。
この星々は、多くの犠牲とたゆまぬ努力によって蒔かれた"夢の種"なのだ。
私はこの種を、決して死なせることなく育ててゆかねばならない。
これは、亡きマティウス殿下の遺志でもあった―この広い宇宙、そこに住む全ての人が等しく人であるために―私は殿下の遺志を継ぎ、そして新たな時代を創るため、皆と共にこの夢の種を育ててゆきたい。
そう強く思う。
臣民諸君、それに日々我が下で働く皆。私は君たちには苦労をかけてばかりだ…。本当に申し訳ない。
しかし私は、これからも君たちと共に歩いていきたい。
この十五年間、共にこの帝国を創り上げてきた―夢のような時間もあれば、辛い時も―常に諸君らの力があったからこそやって来られたのだ。
まだまだ先は長い。
私の人生を賭けたこの
我らの旅路は、まだ始まったばかりだ__」
―開拓篇 Fin
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