-Side Story- イルシアとマリュリア 中編③「厄介事」

親衛隊保安警察とのいざこざから数週間が経ち、警備隊と特務隊の合同公開訓練まであと三日。この日、マリュリアはトイアーに呼び出された。


マリュリア「お呼びでしょうか、内務卿」

トイアー「うむ、話があってな。少し前にアリアと言う女性の話をしただろう?」

マリュリア「はい、」

トイアー「帝都に連れて来たい、と。あれは私情だな?」

マリュリア「私情です」

トイアー「ということなら、最優先で進めたい公務もあるし、エルゼの後任にするとしても一度話してから決めようと思う」

マリュリア「承知しました」

トイアー「それでも決めてから手続きやら引き継ぎやらで数週間かかるとは思う。待たせてしまって申し訳ないが、そういうことだと伝えておいてくれるかい?」

マリュリア「はい。では私はアリアに連絡して来ます」

トイアー「うむ、頼んだ」


マリュリアが部屋を出ようとした時、


トイアー「あぁ、あと。」

マリュリア「?」

トイアー「三日後の訓練頑張るんだぞ。他の大臣が見に来るし、テレビも入る予定だ。気を引き締めて行けよ」

マリュリア「はい。その間クラーラはどうしましょうか?」

トイアー「うーん…私が一緒にいよう。テレビには映らないように気をつけるよ」

マリュリア「ありがとうございます。では、失礼します」


マリュリアは自室へ戻った。


マリュリア「クラーラっ!」

クラーラ「お姉ちゃん!」


イルシアはマリュリアに飛びついた。


マリュリア「うふふ…、ねぇクラーラ?」

クラーラ「なんですの?お姉ちゃん」

マリュリア「三日後なんだけど、私用事があるから、その時は内務卿と一緒にいてくれないかな?」

クラーラ「わかりましたわ!」

マリュリア「ありがとっ」

クラーラ「何がありますの?」

マリュリア「うーん…その時わかるよ!」


―――


それから三日が過ぎた合同公開訓練当日の早朝。

マリュリアは早起きして訓練の準備をしていた。イルシアはまだ寝ているようだ。


マリュリア「……」

イルシア「ん…すぅ…」

マリュリア「うふふ…」


その時会議室側の扉が静かにノックされた。


トイアー「マリュリア、私だ内務卿だ」

マリュリア「どうぞ。クラーラがまだ寝ているので、静かにお願いします」


トイアーが部屋に入ってきた。


マリュリア「おはようございます、内務卿」

トイアー「おはよう、マリュリア」

マリュリア「何かご用で?」

トイアー「そうなんだ…実はな、合同訓練の敵役が保安警察になったそうだ…」

マリュリア「…は?保安警察が…?」

トイアー「うん。敵役。」

マリュリア「……わかりました…。報復のつもりでしょうか」

トイアー「だろうな。万一に備えて念の為警戒しておいてくれ」

マリュリア「…一応何でこうなったのか調べてみます」

トイアー「うむ、私も調べておくよ」

マリュリア「あ、内務卿。訓練の間クラーラの事、お願いしますね」

トイアー「任せなさい、じゃあ私は戻るよ」


トイアーは部屋を出た。


マリュリア・通信器「こちらハル1。全員に告ぐ、合同訓練の適役が保安警察になった。」


マリュリア「はぁ…面倒くさいことになったなー…」

イルシア「んっ…お姉ちゃん…」

マリュリア「あぁ、クラーラ。おはよう!」

イルシア「おはようございます……」

マリュリア「クラーラ、早速で悪いけど、私もう行かなきゃなんだ」

イルシア「うーん…わかりましたわ…」

マリュリア「うん、内務卿がすぐ来るから。一緒にいてね」

イルシア「はぁい…ふわぁ…」

マリュリア「それじゃ行ってくるね、おねむさんっ」

イルシア「ぷぎゃ」


マリュリアはイルシアの鼻をつんっとひと突きしてから部屋を出て、合同訓練の会場へ向かった。

会場は総統府敷地内の広い運動場のような場所で、屋内を模したセットで行われる。


マリュリア「ここか…広いなー…」


ハル6「隊長!」

ハル1「来たよ〜」

ハル2「隊長。特務隊は隊長で最後ですよ」

ハル1「ははは…すまなかったね笑」

ハル4「それより、何で敵役が保安警察に…」

ハル1「多分この前の件の報復だろうね…」

ハル6「なら、ぶちのめすだけだ!」

ハル1「そうだね…久しぶりにやっちゃおうかっ!ただそれでも、訓練優先だからね?」

ハル7「当たり前ですよ。」

ハル4「…奴等もしかしたら、本物の火器やナイフを使うかもしれません…」

ハル2「憶測で物を言うのはやめるんだ」

ハル5「隊長が狙われるんじゃないですか?」

ハル2「隊長は強いよ、あいつらじゃ足りないだろうね」

ハル1「ははは、流石に盛り過ぎだよ笑」


その時、警備隊のベルサ隊が会場へ到着した。


ベルサ1「よぅ〜、特務隊の野郎ども〜元気かぁ?」

ハル6「誰が野郎だ!?」

ハル7「お前は野郎だろ」

ベルサ1「それな」

ハル6「あぁん!?」

ハル2「落ち着け」

ハル6「落ち着いてらぁ!」

ハル1「ハル6、少し黙れ」

ハル6「はい…」

ベルサ1「ありがとね、お嬢さん。今日はよろしく頼むよ」

ハル1「こちらこそ」

ベルサ1「…敵役が保安警察ってほんとか?」

ハル1「…どうやら本当らしい…」


と、そこに保安警察が到着した。


保安警察員「来てやりましたよ。非正規部隊の訓練なんかに急に呼び出しやがって…」

ベルサ1「私はベルサ隊の大隊長だ。我々は総統府及び警務省の下に正式に設置されている部隊だ。非正規部隊というのは取り消してもらいたいが、我々の方も敵役が突然貴官らになったもので驚いていたところだ」

保安警察員「ほぉん?まぁそんなことは知らん、お前らの都合で突然呼び出されたことには変わりはない」


続けて保安警察員はハル1を見て、鼻で笑った。


保安警察員「ふっ…。さ、私達はそろそろ配置につこうか。君達風情にかまっていても無駄だ。まぁせいぜい頑張るんだな」


保安警察員は準備に行った。


ハル6「…ほんっとにムカつく奴等だ」

ベルサ3「大隊長、何であいつら、我々をあんなに敵対視しているんでしょう?」

ベルサ1「さぁな」

ハル3「…うちの隊長が保安警察の奴等ボコした」

ベルサ1「ははは、やるなぁ」

ハル1「無駄な事言うなぁ〜」

ベルサ2「まぁ、この場で一番戦闘能力が高いのは特務隊だと思うぞ」

ハル1「言い過ぎだよ、」


そうして、特務隊と警備隊は和気あいあいと話しながら打ち合わせに取りかかった。


ハル1「警備隊、特務隊に一応通達。顔は隠してね。テレビが入るらしいから。身バレは危ない」

ハル5「隊長身バレしてるじゃないですか」

ハル1「私の事を知ってる人は君たちよりいるだろうけど、民間じゃないから。まだ大丈夫」


アナウンス<合同訓練開始10分前です>


ハル1「さてと…皆、準備しに行こうか」

ベルサ1「じゃあ後でな」

ハル1「うん、後で」


ハル隊とベルサ隊はそれぞれ装備の準備にかかった。マリュリアは、隙を見て少し一人になった。


マリュリア「…これはすべきじゃないけど…可能性があるからね…」


マリュリアはペンダントを掴み、目を瞑り何かを呟いた。


マリュリア「……さてと、行くか」


ハル1「…みんな、やるぞ」


特務隊と警備隊が準備を整え待機する。保安警察は配置についた。

報道陣も席に着き、中継を開始した。


リポーター「今日は、総統府警備隊・陸上戦闘部隊と、警務省の特殊部隊・特務隊合同訓練の模様をお伝えします。帝国屈指の特殊部隊がここに集結しています。この訓練は、人質救出と敵の殲滅が目的です」


観覧席には各大臣が揃っていた。イルシアは内務卿と総統の席の後ろに隠れて、間から覗いていた。


クラーラ「内務卿さん、お姉ちゃんあそこにいるのですの?」

トイアー「そうだよ、他の者には内緒だぞ」

クラーラ「はいっ」


リポーター「そして、多くの閣僚や政府関係者も視察に来ております」


ハル6「お偉さん大集合だな、それにテレビまで」

ベルサ5「本訓練がそれだけ注目されてるってことだ」

ハル2「誰が見ていようがいつも通りやるだけだ」

ベルサ1「手加減しては訓練の意味がないからな」

ハル1「よし、全員フェイスマスクして。行くよ」


ハル隊、ベルサ隊が突入態勢に入った。


ハル6「…テレビの奴等は俺等の事どう映すんだろうな」

ベルサ4「さぁな、実況でもすんじゃねえか?」

ハル6「実況か、俺たちの活躍しっかり実況してくれんなら録画してくればよかったなぁ」

ハル1「そこ、無駄口不要!」


リポーター「両部隊は突入態勢に入ったようです!」


訓練開始の合図が鳴る。

ハル1が手で合図をして両部隊は同時に突入した。

・・・

最初の部屋にハル1,2が突入し、敵2名を排除すると、続けてハル3〜5、ベルサ1〜4が部屋へ入る。


彼らが次の部屋(小倉庫①)に入ると同時に、外にいるハル6〜7、ベルサ5〜7が最初の部屋に入った。

小倉庫①には敵が3名おり、ハル1、ベルサ1,2がこれを排除。


ハル1〜5、ベルサ1〜4は先へ進む方向で待機、後続のハル6〜7、ベルサ5〜7は、もう一方の扉から中倉庫①に突入。


中倉庫①には敵5名。突入してすぐ敵3名を排除、残った2名は物陰に隠れた。

ベルサ5が手榴弾を投げると、敵2名は飛び出してきたがハル7とベルサ5の射撃によって排除された。

そして奥の扉を開けて部屋に入ると、突っ立っていた敵2名を排除し保護対象者1を確保した。


ハル5「…こちらハル5、保護対象1を確保、繰り返す。対象1を確保」

ハル1「ハル5、了解。1名を護衛に外へ出して。それ以外は私達と合流して。」

ハル5「了解。終了」


ハル5「ベルサ7、外まで一緒に行け。その後は別命あるまで待機」

ベルサ7「了。」


ベルサ7が保護対象者を外へ連れて行くと同時に、他の隊員は小倉庫で待機しているハル1達の部隊と合流した。


ハル1「さーてと…行くよ。」


隊員達は次の部屋へ入った。入ってすぐにハル1、ベルサ1が敵2名を排除。

そしてまた次の部屋に入ると、前方に2つ扉が並んでいる。左の扉をハル2に確認させる。


ハル2「異常無し」


続いてハル1が右の部屋に入ると、敵1名がナイフを持ってハル1に切りかかった。


ハル1「いっ…」


ナイフはハル1の右腕をかすったが、ハル1はひるまず敵を叩き付けた。

しかし、ハル1の腕から"赤色の血"が流れてきた。


ベルサ1「おいおいどういうことだ…。」

ハル1「…どういうことって…?」

ベルサ1「何で血が流れる…。まさか本物のナイフか!?」

ハル1「かもね、…でも訓練続けるよ。」

ハル3「隊長!一度中断すべき事案でしょうが!」


その時、観覧席で見ていた総統が内務卿に耳打ちする。


クルーク「少し…様子が変ではないか?」

トイアー「ですね…確認させます」


ハル1「けどここでやめると、何かあったんじゃないかって憶測が飛び交って面倒くさいことになるからね。」

ベルサ2「やめるべきでしょ!」

ベルサ1「この場の指揮はハル1が執っている。俺達はハル1に従うまでだ。」


ベルサ1は手早く応急処置を進めながらその場を収めた。


ハル1「…訓練続けるよ。」

ベルサ1「了解した…。ただしあんたの傷が広がりでもしたら即終了だ。」

ハル1「わかった。…ベルサ7、合流して。」

ベルサ7「了。」

ベルサ1「全員不信感があるだろうがよく聞け!これが本番なら誰がどうなっていてもおかしくない。ここは戦場だ!どんな事態にも臨機応変に対応せねばならん…、ハル1に続け。」

ハル1「…感謝しかないよ…。さて、とっとと終わらせよう。」

ベルサ1「おう!」


ベルサ7が合流し、中倉庫②に突入する。

突入してすぐ、ハル1、ベルサ1,3が敵3名を排除。残りの3名が物陰に隠れた時、うち1名が発砲した。


ベルサ3「本物1確認!」

ベルサ1「本物1確認」

ハル1「本物1確認、了解!ハル5、閃光弾投げて。」

ハル5「了解。閃光弾!」


ハル5が敵に向かって閃光弾を投げた。そして爆発と同時に近づき、発砲した者1名を拘束。他2名を排除した。


そのころ観覧席の総統と内務卿は、エルゼから報告を受けていた。

エルゼ「………以上です。」

トイアー「ありがとう。総統、どうやら保安警察員が本物の武器を持ち込んでいたそうです」

クルーク「!?本物は使わないと言っていたじゃないか」

トイアー「はい…そしてどうやら特務隊員の1名が負傷したそうです。今すぐ訓練を中止すべきだと考えますが」

クルーク「…今現状をよく分かっているのは彼ら自身だ。ひとまず彼らに委ねよう」

トイアー「左様ですか……承知しました」


イルシアは隣で話を聞いていた。


クラーラ「お姉ちゃん…無事でいて…」


イルシアはペンダントを握った。

と、現場が混乱している最中のことだった。


リポーター「今入った情報によると、隊員のうち1名は内務卿の秘書のようです。」


マリュリアの正体が放送されたというのだ。この事態はすぐに総統に伝わった。


総統秘書「……とのことです。」

クルーク「なんという事だ…。マリウス」

トイアー「なんでしょうか」

クルーク「…テレビが、隊員のうち1名が内務卿の秘書であると、報道したそうだ」

トイアー「…っ!」


ハル1「…ベルサ1〜5は2枚扉から部屋に入り制圧して。」

ベルサ1「了解。」


ベルサ1〜5は部屋へ入り敵2名を排除。続けて次の部屋に入ると1名を排除。

また次の部屋に入る。


ベルサ1「こちらベルサ1。対象2を確保。これより1人を付き添わせ外へ出す。」

ハル1「こちらハル1了解。」

ベルサ1「5は付き添って外まで連れて行ってくれ」

ベルサ5「了解。」

ベルサ1「それ以外は合流するぞ。」


ベルサ5が対象者と外へ向かうと同時にハル隊に合流した。


ハル1「この先は大倉庫だ、二手に分かれよう。ベルサ隊は真っすぐ進み小倉庫に入る。ハル隊は左へ周り敵の排除とベルサ隊の援護をする。」

ベルサ1「よっしゃやるぞ。」


ハル1が扉を開け、そこにいた敵1名を排除すると、大倉庫への突入を始めた。

ハル隊が突入してすぐに敵2名を排除、左に曲がり敵3名を排除すると、ベルサ隊が突入して残りの3名を排除した。突然、ハル2の後ろの扉が開き、敵が銃を持って現れた。


ハル1「…っ!…本物!」


ハル1が敵の銃を咄嗟に掴み上げ、ハル3が拘束する。


ハル3「危なかった…」

ハル2「すまない、助かった。」

ハル1「早くこんな訓練終わらせるよ。」


そしてハル隊、ベルサ隊は同時に部屋に突入した。

ハル隊は入ってすぐの敵1名を排除、次の部屋の2名も排除、そして保護対象を確保した。

ベルサ隊は入ってすぐ敵3名を排除し、次の部屋に入ると敵もう1名を排除して保護対象を確保した。


ハル1「こちらハル1、対象者確保。」

ベルサ1「こちらベルサ1、対象者確保。」

ハル1「ハル6は対象者を外へ連れて行って。」

ベルサ1「ベルサ4、対象者を外へ連れて行くんだ。」

ハル1「それ以外は最後の一部屋に行くよ。」


二隊は最後の部屋に向かった。


ハル1「ハル2、ベルサ1、一緒に入るよ。」

ハル2「了解した。」

ベルサ1「了解。」


3人はハル1の合図とともに部屋に突入し、即座に敵2名を排除。対象者を確保した。


ハル1「全対象者確保、作戦終了。皆、外に出るよ。」


リポーター「訓練は終了しました。お見事でした!」


こうして合同公開訓練は終了した。


ハル1「ベルサ1、貴方指揮官向いてるんじゃない?」

ベルサ1「指揮官か…俺にゃ性に合わねぇんだ。」

ハル1「そっか。今日はお疲れ様。ゆっくり休んで。」

ベルサ1「おぅよ、またいつでも呼んでくれよ。じゃあな」


ハル隊とベルサ隊は別れた。


ハル1「みんな、お疲れ様。私は今回の事を伝えなきゃだから、先戻るね」

・・・

マリュリア「疲れたー…内務卿の所に行かなきゃ…」


マリュリアは内務卿の元へ向かった。


クラーラ「…お姉ちゃん!」

マリュリア「クラーラ!」

クラーラ「おかえりなさいっ!」

マリュリア「ただいま、クラーラっ」

トイアー「マリュリア、訓練お疲れ様」

マリュリア「ありがとうございます。内務卿、ご報告があります」

トイアー「保安警察が本物の武器を使っていた件か?」

マリュリア「え、あぁ、ご存知でしたか。ナイフ1つ、実銃2つが使用されていました」

トイアー「ふむ、負傷者が出たと聞いたが全員無事か?」

マリュリア「負傷と言うほどのものではありませんが…私の右腕にナイフがかすりました」

トイアー「なに!?大丈夫なのかそれは!今すぐ病院に…!」

マリュリア「もう内務卿、大袈裟ですよ笑。私は部屋に戻って手当てしますね。もう少しクラーラの事、お願いします」

トイアー「うむ、わかった。気を付けて戻るんだぞ」

マリュリア「…?はいっ」

クラーラ「お姉ちゃん大丈夫なの…?」

マリュリア「大丈夫だよ。ごめんね、もう少し内務卿といてね?」

クラーラ「わかりましたわ…」


マリュリアは部屋に戻った。

部屋に戻ると道具をしまって椅子に座った。


マリュリア「さてと、久しぶりに…なるか」

・・・

数分して、内務卿とイルシアがマリュリアの部屋に入ってきた。


クラーラ「お姉ちゃん……?内務卿さん、お姉ちゃんがいませんわよ?」

トイアー「マリュリアが?うーん、どこに……あ、ほらあそこ、ベットの上を見てごらん?」

クラーラ「ベットの上…?」


ベットを見ると、オレンジ色のもふもふが寝息を立てていた。


クラーラ「…猫……?」


その時イルシアは、内務卿の部屋で見た写真を思い出した。


クラーラ「…お姉ちゃん!」

トイアー「うん、まーりゅだ。かわいい。」

クラーラ「…撫でてみてもよろしくて?」

トイアー「そーっとね」


イルシアはまーりゅの隣に座り、頭を撫でた。


まーりゅ「…んにゃ〜」

クラーラ「はわっ!…内務卿さん、まーりゅちゃんかわいいですわ!」

トイアー「どれどれ」


するとトイアーが目にも留まらぬ速さでまーりゅの隣にやって来た。


クラーラ「…」

トイアー「よしよし可愛いぞ〜まーりゅよ〜」

まーりゅ「にゃー…にゃぁあー!」


まーりゅは内務卿の手に噛みついた。


トイアー「いででっ、」

クラーラ「あははっ!笑…お姉ちゃん、"おいで"」


イルシアのその言葉には何か惹きつけられるような温かさがあった。

まーりゅはイルシアの膝の上でまるくなった。

内務卿は”僕もマリュリアの膝の上で丸くなりたぁいぃ”とかぶつくさ言っていたが、まーりゅに鋭く睨まれると、ベッドの隅に縮こまってしまった。


クラーラ「…よしよし、」

まーりゅ「ゴロゴロ」

クラーラ「かわいいですわね…//」

まーりゅ「にゃ〜♡」

トイアー「…私は邪魔だな、戻るよ…」


内務卿はどこか残念そうに部屋を出たが、イルシアもまーりゅもそれに気づいていなかった。

かわいそうである。


それからしばらく、イルシアとマリュリアは戯れていた。

言葉に表せないほど可愛かった。


―――


翌日。

マリュリアは東市場に用事があり、列車に乗って向かうことになった。

列車の乗り場まで内務卿とクラーラ、それと二人を警護するベルサ隊が見送りに来た。


マリュリア「内務卿、行ってきます」

内務卿「うむ、気を付けてな」

マリュリア「はい。クラーラ、行ってくるね」

クラーラ「行ってらっしゃいですわ…気を付けてね…」

マリュリア「うん、行ってきますっ」


マリュリアがイルシアの頭を撫で、列車に乗ろうとした時、イルシアが呼び止め、マリュリアの頭を撫でた。マリュリアは満面の笑みを浮かべた。発車のアラートが鳴ったので、列車に乗り込み東市場へ向かった。


道中、マリュリアは特務隊情報班にエルゼの電話の盗聴を頼んでいた。その後、空いている椅子に座ってうたた寝した。


―中編④へ続く

コメント

このブログの人気の投稿

製作委員会 メンバー紹介

第3話 芽吹き、新たな試練

第1話 我が航路に光を求めて