-Epilogue- 新たな出会い
カラーディ星系外縁部。小天体漂う閑静な地に、突如一機の無人機が出現。
警務省の監視衛星と殆ど同等サイズの人工物がジャンプをしたという事実に、カルラディア帝国上層部は驚きを隠せずにいた。
軍は即座に警戒態勢を取り、無人機の監視と調査を開始した。
―時に、カルラン暦14年。
小さいながらも、大きな物語の幕開けであった__
* *
官民一体となった調査の結果、無人機は探査用の人工衛星である事が判明。
この時期、周辺宙域に旧フルクファーラント大皇国の残党軍が出現していたこともあって、帝国軍は安全確保と国内情報の流出阻止のためこれを撃破する事に決め、上層部に報告書を提出した。
ー総統官邸ー
内務卿秘書のマリュリアとアリアは、今日も仕事の報告のため内務卿執務室に来ていた。
マリュリア「―以上になります、内務卿」
トイアー「そうか。報告ご苦労さま」
ふと、アリアが内務卿の机の上に置いてある写真と資料に気づいた。
アリア「内務卿、それは?」
トイアー「これか?この前、カラーディ星系外縁部に無人探査機と思しき物体がジャンプアウトしたんだが、その写真だ。…アリア、何か心当たりが?」
アリア「いえ……。では、私達は失礼します」
トイアー「うむ、ご苦労だった。何か気付いたことがあったら遠慮なく言ってくれよ?」
ー秘書室ー
アリアは部屋に戻ってから、ずっと黙りしていた。しばらくして突如口を開くと、
アリア「本国の無人探査衛星…」
そう呟いた。
マリュリア「へ?さっきの衛星のこと?」
アリア「あ。さすが、マリュは耳がいいね」
マリュリア「本国ってことは、夕電の?」
アリア「下見、ってとこかな。私たちを連れて帰ろうとしてるんだと思うけど…」
マリュリア「さすがに急すぎるよ…クラーラもいるし」
アリア「そうね…。けど、私の家族もマリュの家族もいる、私達の生まれ故郷なんだ。一度帰った方がいいかもしれない」
マリュリア「じゃあ…」
アリア「とりあえず内務卿に伝えよう」
マリュリア「わかった!」
二人は再度内務卿執務室に向かった。
アリア「内務卿、失礼します」
トイアー「どうしたんだ?」
アリア「さっきの写真の事で」
トイアーは写真を手に取った。
トイアー「何か分かったのか?」
アリア「はい…。ち、ちなみになんですが、その衛星、どうするつもりですか…?」
トイアー「軍が迎撃許可を求めてきている」
アリア「!!、攻撃はお辞めください!」
トイアー「ふむ。何か知っている事があるようだな?」
アリア「っ…私と…マリュの生まれ故郷の衛星ですっ!」
トイアー「つまりあれはガミラスの物だと?であればなおさら放おって置く訳には…」
アリア「いえ!ガミラスのものではありません。その…こういう事です」
アリアはポケットに手を入れ、何かを押した。すると彼女の肌色が、ガミラス人の青い肌からマリュリアと同じような色に変わった。
トイアー「どういう事だ…」
アリア「私もマリュも、異国の人間です」
マリュリア「この国を建てる前、ポルトメルシアで貴方に助けて頂いた時―あの時私は、故郷の有人衛星に乗って飛ばされ、あの地に不時着していたんです」
トイアー「そうだったのか…」
マリュリア「当時はフルクの言いなり政権で…半獣半人の私は、ゴミみたいな扱われ方をしていました…」
アリア「私は密入国です…。|旧政府《クソ共》の命令で行なっていた特殊作戦中に逃亡し、ショーゲツを経てカルラディアに辿り着きました。現在本国はクーデターに成功し、新政府が樹立されています」
トイアー「わかった、わかった、とにかくこれは国家の基幹に関わる一大事だ…一先ず閣下の元へ行こう」
マリュリア・アリア「「はい」」
ー総統執務室ー
トイアー「閣下、失礼致します。緊急のお話が」
マリュリア・アリア「「失礼します」」
クルーク「一体何事だ。それも3人そろって」
トイアーは事情をクルークに話した。
クルーク「……ふむ。…アリア、君は何者なんだ?」
するとアリアは一歩前に出て、ガミラス式とは異なる敬礼をしながら名乗った。
アリア「はっ、夕電帝国特殊作戦部隊第2分隊所属、アリア・グラントですッ!」
クルーク「ふむ…。アリア、今君の言った"夕電帝国"とは何かな?」
アリア「私とマリュの生まれ故郷です。シュリウシア銀河の低密度宙域にあり、単一の星系を支配する国家です。クーデター後は中立国として、自国の防衛力をかなり増強していると聞き及んでいます」
マリュリア「あの、私も本当の名前があって…柊 舞衣(ヒイラギ マイ)と言います」
クルーク「では、君達と例の衛星は、その夕電なる独立国から来たのだな?」
アリア「はい。衛星は私とマリュを救助する為の先遣隊だと思われます」
クルーク「我々に対する攻撃の意思は?」
アリア「今の政府なら無いはずです。旧政府ならば今にでも戦争を仕掛けたでしょうけど…」
クルーク「今はアリアの証言を信じる他は無いか……。カイン、軍令部へ行って、探査機への警戒体制解除と攻撃の禁止を伝えてくれ」
カイン・ヴォルク総統秘書「承知致しました」
クルーク「君達は夕電へ返還しなければならんな…」
マリュリア「ですがクラ、イルシアが…」
クルーク「イルシアは私の養子だからな、生活等の問題は無い。無いが…、そうは言ってもそう簡単に別れられるものではないだろう」
トイアー「どう致しましょうか」
クルーク「返還はやる。それが保護した者としての責務だ。しかし、我々はまだ彼の国の事を知らなすぎる。私が出向くべきだろうな」
クルークはそう言うと、急遽三日後に首脳会談を行うことに決めたのであった。
ー三日後ー
総統自らが率いるカルラディア艦隊は、アリアの案内で夕電帝国領へ向かった。
クルーク「ここから先は夕電の領域だ。全艦、停止してその場で待機。ロドルフィアのみ接続宙域まで進入する」
夕電政府との連絡手段を持たないカルラディア帝国は、直接出向いて反応を待つ他なかった。
数分後、夕電帝国軍所属の戦闘警戒機がこちらの様子を伺いにやってきた。
電測員「艦隊前方にゲシュ=タム・ジャンプ反応!小型物体です…接近してきます!」
クルーク「無人探査機の段階で予測はついたが…あんな小型機までもジャンプできるとは」
警戒機『こちら、夕電帝国宇宙軍。国籍不明艦隊へ告ぐ、貴隊は現在、夕電帝国接続宙域を侵犯中である。直ちに立ち退かれたい。繰り返す……』
通信士「こちらはカルラディア帝国宇宙軍所属、航宙戦艦ロドルフィア。火急の事由があり、貴国との対話目的で訪れた」
警戒機『…………戦艦ロドルフィアに告ぐ、警戒状態を解除し待機されたし』
通信士「総統閣下、どういたしましょうか」
クルーク「よろしい、従うとしよう」
通信士「はっ。…」
クルーク「全艦、警戒態勢を解け」
それから5分もしない内に、出迎えがやってきた。
電測員「前方にジャンプアウト反応!数、62!」
クルーク「出迎えにしては随分多いな…。総員第2種警戒配備。非常時に直ぐ動けるよう―」
アリア「総統!大丈夫です。彼女らは攻撃はしてきません」
艦隊の目の前に、夕電艦艇62隻が横2列でワープアウトした。直後、通信機から女性の声がした。
葵艦長『こちらは夕電帝国宇宙軍・第2連合艦隊司令の葵です。カルラディア帝国艦、要件を聞きます』
クルーク「私はカルラディア帝国総統、ロドルフ・クルーク。現在我々は、貴国国民2名を保護している状態にあり、その返還に向けた対話の為訪れた。本日はその証明も含め1名が同行している」
葵艦長『ご無礼を致しました。上に確認を致しますので、少々待機していてください』
また5分ほどが経ち、
葵艦長『クルーク総統、我が国の首相と会談頂くため、ご案内申し上げます。こちらの指示に従ってご同行をお願い致します』
艦隊は小ジャンプの後、首都星の衛星へと案内された。
砲雷長「態々得体の知れない星系まで来たのに、首都には入れてくれないんですね」
クルーク「得体の知れないのは相手にとっても同じだ。致し方あるまい」
クルークは、アリアと秘書と護衛を連れて降り立った。出迎えの職員に案内され、周囲を黒服に囲まれながら近未来的な建物へと入る。
丸山首相「夕電帝国へようこそいらっしゃいました。遠路はるばる、ご苦労様でしたな」
クルーク「お出迎え感謝いたします。私は、カルラディア帝国総統のロドルフ・クルークと申します」
丸山「私は先のクーデター後に首相に着任しました、丸山です。貴国には、うちの国民を長きにわたり保護して頂いたこと、深く感謝申し上げます」
クルーク「こちらこそ、彼女がこうして結んでくれた縁に感謝致します」
アリア「特殊作戦部隊第2分隊所属、アリア・グラントです。お久しぶりですね、丸山陸将」
丸山「久しぶりやなアリア、それと私はもう陸将ちゃうよ。…ほんでその、舞衣さんは…?」
クルーク「申し訳無いのですが、本日は同行しておりません」
はて、と驚く丸山首相に、アリアが説明する。
丸山「はぁなるほど、そういう事情がありましたんやな」
クルーク「はい。本日はそのことのご説明に上がったと言うわけでして」
丸山「ということは、もう目的は果たしてしもたと」
上品に笑いながら丸山首相が今の状況をざっと整理した。
クルーク「しかし、こうして得たご縁です。如何でしょう、今後の両国の発展のためにも、この機会に国交を結ばせては頂けませんか?」
丸山「良い考えですな。仲良うやらしてもらいましょう」
正式な文書調印は後日となったものの、こうしてカルラディアと夕電の間に国交が樹立することとなった。併せて、貿易協定の締結も行われた。
夕電帝国は永世中立国として、その軍備を増強している。
しかし、単一星系のみを支配しているという性質上、資源不足の傾向があった。
一方のカルラディア帝国は、先のフルク戦役で領域を拡大し、国民の数が増えたことで、食料や生活必需品の供給を強化する必要性に追われていた。
そこで、両国の需要を満たせる貿易協定を結んだのだ。
ー2週間後ー
ヴィルディアの港湾施設に、夕電からの最初の貿易用輸送船と、それを護衛する戦闘警備艦が入港した。
夕電の艦艇が入港すると、カルラディアの技術者達が目を輝かせて見物しに来た。
貿易船の帰還時には、マリュリアとアリアの一時帰国も行われる事となっていた。
アリアは先の会談時には夕電に残らず、荷物やその他諸々を整理しに一度戻ってきていた。
アリアとマリュリアの夕電帰国にはカルラディア側の艦隊と内務卿が同行する事になった。
出港当日の港には警務省特務隊、総統府警備隊陸上戦闘部隊や遥々東市場から訪れる人々、それにイルシアもいた。
イルシア「お姉ちゃん達行ってしまいますの…?」
マリュリア「ごめんねクラーラ、」
イルシア「はい…ぐすん」
マリュリア「クラーラ…」
アリア「大丈夫よクラーラちゃん、また1週間後には会えるからね」
イルシア「はい……」
トイアー「そろそろ出発の時間だ、」
マリュリア「わかりました。またね、クラーラっ」
アリア「クラーラちゃん、またね」
イルシア「お姉ちゃん…またね、帰って来てね!待ってるからね!」
マリュリア「もちろん!」
アリア「……」
イルシアは目に涙を浮かべながらも笑顔で手を振り、出港する艦隊を見送った。
そうして、一同は夕電帝国領へと向かった。その道中、あの者たちにつけられているとはいざ知らず_
ー夕電帝国領ー
夕電にたどり着いた際には、先の訪問時にも出迎えをした葵艦長指揮する第2連合艦隊が出迎えた。
葵艦長『カルラディアの皆様、長旅お疲れ様でした…と言ってもワープなら一瞬ですね』
トイアー「お出迎え感謝致します。私はカルラディア帝国内務卿マリウス・シュトラス=トイアーと申します」
葵艦長『初めましてトイアー様。私は夕電帝国宇宙軍第2連合艦隊司令の葵です。貴艦隊のうち、3隻までは首都星近辺までエスコートします。残りの艦はその場でお待ち下さい』
トイアー「了解しました」
と、その時、旗艦カルドレルドの艦橋に突如として警報が鳴り響いた。
トイアー「どうした!」
電測員「艦隊右舷方向にジャンプアウト反応多数!次元震も検知!!」
トイアー「なんだと!?」
電測員「艦種識別……旧フルク軍!!」
トイアー「残党か…ミクラス、指揮を頼む」
ミクラス「はっ!全艦、砲雷撃戦用意!」
葵艦長『トイアー様、ここは私共にお任せ下さい』
トイアー「しかし!」
葵艦長『旧フルク軍と云う事は我々の敵でもあります。それに、我々の能力を貴方がたに知ってもらう良い機会ですので』
ー第2連合艦隊旗艦艦橋ー
葵艦長「艦隊各艦に達す。装甲巡洋艦の半数はカルラディア艦隊右舷で展開し流れ弾を防げ。残り半数は周辺待機」
数秒のうちに、装甲巡洋艦の半数と戦艦10隻が迎撃の配置に着いて、他の艦艇は周辺にて警戒態勢で待機に入った。
通信員「艦長、全艦配置に着きました」
葵艦長「主砲、弾種を陽電子衝撃波砲に切り替え」
戦術長「え、レールガンで一気に殲滅しないのですか?」
葵艦長「またとない機会だ、新型砲の威力を試してみよう」
戦術長「はい!…照準よし、いつでも撃てます」
葵艦長「了解…撃てー!」
主砲の両用砲から、衝撃波を纏った陽電子ビームが一斉射され、狙い撃ちに遭った大型艦は一瞬で木っ端微塵に吹き飛んだ。
葵艦長「威力は上々ね。けどアイツ等には勿体ない品だね…よし、全艦主砲をレールガンに切り替え!残りの雑魚を片付けるよ」
戦術長「戦闘システム準備よし、いつでも行けます!」
葵艦長「よし、レールガン用通常弾装填っ!」
戦術長「通常弾装填……装填完了、撃ち方用意よし」
葵艦長「了解、撃てぇえッ!」
艦隊は主兵装のレールガンを、1門あたり毎分80発という高レートで射撃した。
蜂の巣にされたフルク残党艦隊は、10秒と経たずして壊滅したのであった。
電測員「敵艦隊壊滅」
葵艦長「戦闘用具収め」
戦術長「了、戦闘用具収め」
葵艦長「カルラディアの皆様方、安全が確保されましたので首都星までエスコートします」
ー夕電帝国首都星ー
内務卿一行は、首都星の首相官邸へと案内された。
丸山首相「ようこそ、夕電へ。私は首相の丸山です」
トイアー「私はカルラディア帝国内務卿のマリウス・シュトラス=トイアーです。先日は突然の訪問にも関わらず、我が総統との会談をお受け下さり誠にありがとうございました。本日は、改めて、こちらで保護している2名の返還の為に参りました」
丸山首相「こちらこそ、貴国と良い関係を築いていけることになってありがたい限りです。で、君が舞衣さんやね?」
舞衣(マリュリア)「は、はい!始めまして…」
丸山首相「…貴女方獣人が政府を信用しておらんのはよお理解しているつもりです。舞衣さん、申し訳なかった」
舞衣「いえ、お気になさらないでください。夕電は昔からそういうお国柄でしたので…」
丸山首相「今は色々と制度的なバックアップもあって、状況は改善されてきておるんですよ。そうやアリア、舞衣さんと一緒に今の国を見てきたらどうや?」
アリア「そうですね、そうさせて頂きます。じゃあマリュ、行こっか」
舞衣とアリアは部屋を出た。
トイアー「2人についてなのですが、秘書業務の引き継ぎなどもありますので、1週間を目処に一度帰ってきてもらう予定で考えております。度々の往来でご不便をおかけ致しますが、何卒…」
丸山首相「ええんですよ。それに往来が活発になった方が友好関係の強化にも繋がるでしょう。2人の滞在中は官営住宅を貸し与えることに致しましょう。ところで、内務卿殿はいつまで夕電におられるつもりで?」
トイアー「今日は2人の見送りだけですから、私はこれで失礼します」
丸山首相「そうですか…」
トイアー「あ、丸山首相。1つご提案が」
丸山首相「どうされました?」
トイアー「2人を、夕電とカルラディアを繋ぐ外交官にしては如何かと。両国の事をよく知っていますし、行政業務の経験もありますから」
丸山首相「なるほど、ええ考えですな!…何か別の思惑も持ってはるような気がしますけども」
トイアーの内心を見抜くかのように丸山首相が笑う。
トイアー「はは、よくお分かりで…。……やはり私にとっても大事な子達なので、見守ってやりたいのです」
丸山首相「ほっほっほ、わかりまっせ、その気持ち。なんやったら、2人の返答があるまで居てくれはって良いですよ?その間に我が国のことも色々ご紹介させてくださいな」
トイアー「よろしいのですか?ではお言葉に甘えて…」
こうして、マリュリアとアリアは、一時的ではあるが祖国への帰還を果たした。内務卿一行の滞在中には、同行していた技術士官と夕電の技術士官との間でも何やら交流があったとか。
さて、ここから続く話は、またいずれ……
―To Next Chapter
コメント
コメントを投稿