シーズン1総集編 

無限に広がる大宇宙_

静寂な光に満ちた世界。

生まれてくる星もあれば、死んでゆく星もある

そうだ…宇宙は、生きているのだ_


***

母なるマゼラン、遠き故郷

今は懐かしきあの星雲に在る"ガミラス"

彼の星を離れて、もうどれ程が経つだろか……

***


地球暦2185年。

帝星ガミラスは大きく揺れ動いていた。

純血か、融和か。拡大政策が産んだ問題は、滅びに瀕した星を真っ二つに分断しようとしている。


星が滅びへ向かっていることなど知りもしない者が大多数のこのガミラスで、融和派の超新星マティウス・デスラーの死は、純血主義の過激派にとって大きなチャンスであったのだ。


しかしそれでも、自分の信じる道を貫き、亡きマティウスの意思を継ぐ者がいた。

これは、理想へ向かい歩き続けた者たちの、闘いの物語である_


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<外伝>宇宙戦艦ヤマト2190

カルラディア帝国戦記 ―シーズン1 開拓篇―


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クルーク(この星を見つける迄苦節5年…。殿下の理想を叶える為、約束を守る為と云えど、着いてきてくれた彼らには苦しい思いもさせてしまった……。ようやく見つけた、我らの新たなる光…、これを絶やさぬ様に努めねばな)


2190年1月。

5年の放浪の末シュリウシア銀河に到達した、ロドルフ・クルーク率いる旧セカンド・オーダー艦隊。神話に伝わる「白金の星の海」ことハーマリア星系での補給を経て、カラーディ星系へと向かっていた。海賊の襲撃に遭って緊急ジャンプをした先が偶然にも、ガミラスの血を生かすのに適した地であったことは、長い苦しみを耐え抜いた我らにとってはまさに、天より差し伸べられた救いの手に他ならなかった。


新天地ヴィルディアに腰を据え、ようやくひとときの休息を得た。だがその裏では、イスカンダル純製ゲシュ=タム・コアの入手や海賊次元潜航艦の拿捕、それらの発見による数々の新技術の獲得……新たな航路は、我らを急かすかのように開かれていった。


***

我等が築くこの新帝国は、繁栄と銀河統一を実現すべく、すべての臣民と共に総力を結集し、栄光ある未来へ向けて新たなる航路にいま旅立たんとしている。この果て無き宇宙の先に、大いなる夢を見て起ち上がりし同志たちよ。この大地を強く踏みしめ、次なる大宙に我等の旗をはためかせようではないか!


団結せよ!前進せよ!切り拓け!

***


それから5年の月日が経ったある時…。


デルニラッツェ「全艦戦闘配置!レーダー、まだ復旧しないか!」

観測員「レーダー依然として不調!」

デルニラッツェ「レーダー光学モードに切り替え!宙測、次元ソナー起動!」

観測員「光学モード、切り替えた!」

宙測員「次元ソナー起動。………次元キャビテーション探知!12時方向より大型魚雷二、急速に近づく!」

デルニラッツェ「対空防御。弾幕を張れ!」


絶望の日は、突如として訪れた。

満を持してハーマリア星系の掌握に打って出た我が軍第二艦隊は、海賊の仕掛けた罠にまんまと嵌められたのだ。特段の危機的状況もなく平穏に5年間を過ごしてきた我らは、些か慢心していたのだろう…。


だが悲劇はそれで終わりではなかった。第二艦隊の壊滅的状況に、援軍として第一艦隊を派遣したその隙に、奴らは本土を襲った。この5年…いや、10年にわたる民の努力と働きが、わずかな時間のうちに灰と化した瞬間であった。


しかし我らが希みを捨てることはなかった。そこにはまだ、光があったから_


トイアー「閣下!シナノ参謀長から入電です!宙軍司令部は生きています!!」

クルーク「!直ぐに回線を開け!!」


司令部施設の中で唯一生き残っていた宙軍司令部からの入電、それは少なからずその場に居た者たちに希望を見せた。


シナノ『閣下、ご無事で何よりです』

クルーク「シナノ君……、無事なのだな?」

シナノ『ご心配無く、私は軽症です。宙軍司令部は被害も他所より軽微で……。出せる艦も今は無いため、陸軍の一部と協力して負傷者の収容と手当を行っています。』


瓦礫で満ちた司令部内。出火はしていないものの、後ろからは悲痛な声が響く中で、頭から血を流しながら指揮を執る参謀長の姿…。


全軍の決死の奮闘により、我が国は一命を取り留めた。それはもはや九死に一生などではなく、万死に一生だ―そう評する者もいる。


この時、まだ我らは知り得なかった。この銀河に巣食う「影」の存在を…。


***


シュリウシアのとある国家。その玉座の間で元首に謁見を賜る男が一人…


「陛下、辺境への戦闘任務に就いた第608艦隊が帰投致しました」

「そうか…。成果はどうだ?」

「上々との事。戦闘力も申し分なく、建国して5年とは思えぬ発展具合だったそうです。」

「素晴らしい……。”宰相”」

「はっ。」

「我が国より支援の用意があると申し出よ」

「畏まりました。直ちに」


玉座の男から”宰相”と呼ばれた男が去ってゆく。

”宰相”が去った後、男の隣の玉座に掛けた女が口を開いた。


「陛下も、酷いお方ですわね」

「ほぅ?」

「自ら彼の国……カララリでしたっけ?に攻撃を仕掛けたのに」

「カルラディアだ、我が妻よ。私の”慈悲”を見せるには、これ以上の無い良い機会であろう?」

「えぇ、彼の国が”カラクリ”に気付く事も無く、気がついたときには我が国の下僕に…フフフ、本当に悪いお人ですこと…」

「我が国が、この”フルクファーラント大皇国”が銀河の覇者となる、その為の礎となれるのだ。光栄なことだろう?」

「えぇ、全く」


あの海賊を使役する存在に、どうやら総統閣下は薄々勘付いておられたようだ。そしてそれが、この時を待っていたかのように、満身創痍の我が国に支援を申し出てきたのだ。支援を断れば、我が身を守ることはできない。そのまま滅ぼされるかもしれない…。我々に、その申し出を断るという道は無いに等しかった。


使者「そなただけに自己紹介をさせてしまったようですまぬな。私はフルクファーラント大皇国の”相国”クーゲルン・デ・ティーラーだ。此度は皇王陛下より勅命を拝受し交渉に参った。」

ジークハント「しょうこく?本日来られるのは”宰相”殿であると記憶しておりますが…」

ティーラー「あぁ、私がその宰相だ。相国というのは、私が気に入って使用している職名でね。以前国交を結ぶべく私が交渉に赴いた国では、宰相をその様に呼んでいる様でな。彼の国は敬意を持って私をその様に呼んでくださったのだよ。貴殿も是非とも私のことを”相国”とお呼びいただきたい。」


なんと傲慢、なんと勝手であるか。我らの元首を「総統とやら」などと言い、次から次へと出てくるのは、我らを明らかに下に見ている物言いばかり。その場で聞いていた者は皆、怒りを感じざるを得ないのであった。しかしここは外交交渉の場。感情の揺らぎは交渉の破綻に直結する。だが意外にも…いや、あの性格ならば必然か、すぐにあちらがボロを出した。


ティーラー「貴様ぁ!我輩を愚弄するか!!」


ティーラーが銃を取り出した刹那、ジークハントがこれを取り押さえ、さらに追い詰める。


ジークハント「"宰相"殿、誠実なる交渉の場に物騒な物を持ち込むとは…、貴方には…いえ貴国には外交常識が無いのですかな?」

ティーラー「…我が国を侮辱するか!弱小国家の分際で!!」

ジークハント「交渉の場に銃と云う圧倒的な兵器があればそれを使いたくなるのは道理。一度冷静になられるべきだ。今の貴方は愚の骨頂ですよ。」


彼らの愚行はそれだけにとどまらない。カルラディアの技術を分け与えると密約し、交渉の立会人、マズロアの者を買収していたのである。まぁ彼らからしてみれば、「滅びかけの小国の分際で技術供与を断れる筈がない」と踏んでのことであろうが…。

「我等とてそう非力なものではない」、意図せずも、その事を見せつける好機となったのであった。


ジークハント「大前提として!!誠実にて対等なる交渉の場に於いて立ち会わせたる者を自らの側に付ける等言語道断!!貴殿は自身のお立場が国の品位を左右する事を理解しておいでか!!」


ティーラーは激昂したジークハントの圧に怯み黙り込んでしまった。


ジークハント「…ティーラー"宰相"殿、貴国から他に要求はお有りか?」


圧を崩さずジークハントが問いかけると、ティーラーはしどろもどろになりながら回答する。


ティーラー「わ、我が国から貴様たちへの要求は、既に述べた通りである。さ、先程右大将が述べたとはお、思うが、ま、マゼランの技術の提供を陛下はの、望んでおられる。ど、どうだ?4つ目の条件を呑めばわ、吾輩から陛下に口添えなぞ…」

ジークハント「口添え結構!如何なる理由があれど、宇宙の秩序を見出しかねない者に星を砕く術を渡すことは断じて出来ない!」

ティーラー「そ、そうか…、ま、まぁ良い、気が変わっても受けてやらぬがな」


ジークハントの圧に完全に屈してしまったティーラーには、本来強く反論しなければならなかった所を、物語に出る小物の様な言葉を吐くことしか出来なかった。


***


建国5年目にして滅亡の危機に瀕したカルラディア帝国。その危機をもたらした張本人たちによって首の皮一枚を繋がれながら、復興へと歩みを進めることとなる。


幹部「ファルノス、ヒメルティーア間の惑星間空間に次元震感知。フルクファーラント大皇国艦隊のジャンプ・アウトと思われます。」

クルーク「予定通りか。まぁ、彼の国の事だ、まともな艦隊では無いだろうな…」

シナノ「しかし、これで当面はトラブルが有っても彼らが対処してくれるでしょう。経済復興を優先できることは救いです」

クルーク「うむ。…シナノ参謀長」

シナノ「なんでしょう。」

クルーク「フルクの艦隊を出迎えよ。いけ好かぬ相手であっても、礼節を欠く様なことはしたくない」


だがいくら我らが礼を尽くそうとも、彼らは応えるどころか無礼を働くばかり。フルクの民が皆そうであるとは思わぬが、ティーラーに近い者はどうも性根が腐っているようだ。それは、帝国中に火種を撒き散らし、ついに……


幹部「閣下!国民が、駐留艦隊の横暴に我慢ならないとデモを!」

クルーク「……」

トイアー「閣下…?」

クルーク「マリウス、私は彼奴らとの駐留契約の際に、必要外での領地立ち入りは禁ずるとしたと思うが……記憶違いだったかな?」

トイアー「……、いえ私も同じ様に記憶しています。カンツ司令も承諾したのを確認した筈です。」

アンジェロ「閣下、このままですとデモ参加者が暴徒に成りかねません。どうか対応をお願いしたく……」

クルーク「カンツ司令を呼び出せ。それとジークハント君もだ。ジークハント君は即時呼集だ。」

トイアー「どうなされるおつもりですか?」

クルーク「今下手に事を起こす訳には行かん。カンツ司令には部下への契約内容周知徹底の厳命、ジークハント君には外務省を通じて、フルクに抗議文とフルクからも注意をする様申し入れをする。」

トイアー「流石閣下です。冷静な対応尊敬致します。」

クルーク「本当の事を言えば、直ぐにでも連中を叩き出したい所ではあるが、まだその時では無い。……時が来ればあの様な連中など……!!」


『民を率いるものが冷静さを欠いてはならない』


かつてマティウス殿下から教わった事を今も守り続けるクルーク。しかし、教えを守るだけでは民を守れないと言う事を、彼が悟る日も近づいている__。


***


石の上にも三年。遠いテロンという星にはそういう諺があるそうだが、我々は「焼け石の上にも三年」っと言ったところか…。それほどの苦渋を耐え抜き、ようやく戦の女神が微笑んだ。近隣星系への最後の侵攻に乗じて、駐留艦隊を叩き出す。三年前の我々はあまりに無力だったが、今の我々なら戦える。あの大剣を手にした今ならば…!


シャーフ「機関始動!」

機関長「機関始動。ゲシュ=タム・エネルギー充填を開始。補助エンジン点火。エネルギー充填120%」

シャーフ「複製コア、接続!」

機関長「複製コア接続!機関回転数良好、定格まで後三◯…二◯…一◯、定格到達、行けます!!」

シャーフ「ドックカバー解放!メインエンジン点火、アーヘンドラッヘ発進!!」

航海長「アーヘンドラッヘ、発進します!!」

シャーフ「総員、第一種戦闘配置、各砲座攻撃用意!」

観測手「先行して展開中のR型ベルメイとのデータリンクを確認。」

戦術長「マルチロックシステム正常稼働。レーダーとの連動異常なし。各種兵装オールグリーン、いつでも戦闘可能です!」

シャーフ「敵に奇襲を仕掛ける!決してガスから出るなよ」

航海長「了解!」


総統自らが立案し、シャーフが操った龍<アーヘンドラッヘ>は、見事な舞を披露した。同時進行で行われていたワンダスの懐柔及び対フルク連合軍の結成も、順調に進んでいた。そうとは言っても相手は17もの星系を支配する大星間国家だ。油断は断じて許されざる状況であった…


クルーク「臣民達は此度の勝利に湧き上がって居るが…」

マリウス「えぇ、本番は此処からでしょう。何しろ、あの大国相手に"宣戦布告"したのですから。」

クルーク「今頃彼らの元にもその情報は届いているであろうな……」

マリウス「不安、ですか?閣下」

クルーク「当たり前だ」


そう言ったクルークは、中庭に目を馳せる。


公邸の中庭では、3年前に"マズロアの巫女"と名乗る者からジークハントが引き取った、今は義娘である"イルシア・クルーク"と、マリウスの秘書であり帝国情報局員でもあるマリュリア、そして実子である息子の"ロラフト・クルーク"が楽しそうに遊んでいた。

そして、それを妻のリベルタは微笑ましそうに見つめていた。


クルーク「リベルタや、愛しいあの子達に、闘いの影響が及ぶかも知れないと思えば不安にもなろう…」

マリウス「………」

クルーク「だが、私は決してそれを表には出さない。私が不安そうに見えれば士気が落ち勝敗に影響するだろうからな」

マリウス「この戦争、彼らの為にも勝たなければなりませんね。」

クルーク「あぁ。勝つさ、必ず」


この戦いに必ず勝つ。それが民と国と、そして愛する仲間や家族のためになると信じて。

その未来を実現すべく、我らはとある策を打った。


***


会談が行われたのは、ショーゲツ要塞の迎賓室。

マズロアの大君、ミナト・マズロアとカルラディア総統のロドルフ・クルークが相見える。


ミナト「総統自ら、このような僻地に参られた事…有り難く存ずる。マズロア大君国元首、ミナト・マズロアと申す。」

クルーク「カルラディア帝国総統、ロドルフ・クルークだ。貴君は僻地と仰ったが、ここはカルラディア及び外宇宙、そしてフルクファーラントを結ぶ戦略上の要衝。双方の今後の為にも、良い会談としたい」

ミナト「無論こちらもだ。ハーマリアを有する貴国と、事を構えたくはない」


軽い挨拶と同時に、互いに対話の意思がある事を再確認した。

そして、本題のフルクファーラント対策に関する首脳会談が行われた。


ゲーツ「フルクファーラントで大規模な武装蜂起の芽がある。"官僚による横暴許すまじ"、とな。そして相国や官僚等も、暴徒鎮圧のため即座に軍を動員するだろう。我々とて、奴らの傲岸不遜(ごうがんふそん)な姿勢に対してケジメを付けるつもりだ」

クルーク「……彼の国のクーデターに乗じ、我らで大皇国艦隊を滅ぼすと?」

ミナト「無論。だがそれだけでは旨味等皆無に等しい。我らが改革派に計らい、戦後に一部恒星系をカルラディアに割譲させる…事にしようか」

ジークハント「……条件は?」

ミナト「…我々は、長らくハーマリア信仰の守護者だった。その信仰と、カルラディアの方針は水魚の交わり。我々と貴国の貿易と貴国領有域内での信仰の布教さえ認めてくだされば、あとは何も」

クルーク「意外に謙虚なのだな、マズロアは」

ミナト「果たして、そうだろうか」


不敵な笑みをたたえる、銀髪の大君。その瞳は蛇のようで、見られたもの全てが縛られるような感覚を覚える。


ミナト「……一つだけ覚えておくと良い、カルラディアの総統」


総統の首へと、刀が伸びる。護衛のSPらが銃を抜くが、マズロアのSPがそれを制止する。


ミナト「貴様らが、仁義を重んじぬ姿勢を取った場合…同様の事があると思え」

クルーク「…承知した。全力を尽くそう」

ミナト「ならば、同盟成立だ。カルラディアの総統」


カルラディア・マズロアの軍事同盟。大国フルクに対抗するための、大いなる一手である。


 そして、遂に決戦の時は来た__



右大将「皇王陛下、我らは強硬策を取る宰相一派(愚か者ども)に対し一戦交える覚悟でございます。無論内戦等戦時下で起こらぬが良し。只、宰相殿の行動は目に余り…。戦と為らばこの皇都が戦火に包まれるは必定(ひつじょう)。どうか陛下はお逃げ下さいませ……」

皇王「いや、余はここに残る」

右大将「なぜですか?」

皇王「……そも貴様らは、奴の余への忠誠を軽視してはいまいか?」


温厚な雰囲気を纏っていた皇王から、突如としてドスの効いた声が響いた。

皇王シアクヴァヌスⅡ世ことシアクヴァヌス・ウィヌ・ファーラントは、自身の側近であるティーラーにはほぼ絶対と言っていい程信頼を置いている。

無論ティーラー側は絶対的な忠誠を誓っており、それ故に内事外事に積極的に関わることの出来る"宰相"と云う立ち位置にも任命されているのだ。

それだけの信頼を受け、絶対の忠誠を誓った部下の忠誠心を疑う様な事を、ただ"奴憎し"の感情で言われれば、流石の温厚な人間でも頭に来るというものだ。


右大将「い、いえ、決して軽視など…」

皇王「…人には"合う合わない"もある故に、如何(いか)に貴様らが奴を嫌おうとそれは構わん。だが、奴は国内で引き金を引くことは決してないぞ?自らな。何故か分かるか?」

右大将「……」

皇王「奴は貴様らの上辺だけとも言える忠誠心よりも更に深く、強く忠誠を誓っておるからだ。"相国"憎しで撃てば撃たれるは必定。一度冷静になれ右大将。今は戦時、討つべき敵を見誤るな。無論、多少奴に灸を据える必要もあろう。しかし貴様らとて奴と共に甘い汁を啜った筈。その貴様らが今更掌を返し『相国はこの世の悪であるから討つべし』等……、誰が耳を貸すと思うか?」

右大将「では、我らにあ奴へ従えと仰られるのですか!!」

皇王「その通りだ。奴は"相国"。余に次いで高い権力を有する者。要請の通りにするのだ。第一、国家存亡の危機は事実であろう?つまらぬいがみ合いを辞めねば、貴様とてまず間違いなく命を奪われるであろうな」

右大将「………承知、致しました…。各閣僚保有の戦力並びに全軍を再編、宰相殿指揮の元でカルラディア並びにマズロア討伐に向けて動きまする……。」


フルク上層部では摘まれてしまった、内戦の火種。だが、国全体を見ればそう簡単に消えるはずもなく…。


マズロア司令『シャーフ艦長、友軍機の活躍で前面が空いた今こそ、皇都強襲の好機。後ろは我らに任せ、直ぐにでも降下すべきと考える。その上で一つ頼みがある。我らの輸送船団を皇都へ先導して欲しい』

クルーク「輸送船団?一体何をする気だ」

マズロア『革命運動の補助と運動非参加の民衆保護の為に使用する』

クルーク「承知した。シャーフ、降下準備完了次第、マズロア輸送艦隊を連れ降下に移ってくれ。通信士、"UD隊"に打電『ビュッフェ・パーティーは予定通り』だ。」


ビュッフェ・パーティー、そう例えられたからには、何か美味いものがなくてはならない。

技開局と科技庁が共同開発し、今時作戦で本格投入された"潜層艦艦隊"即ちUD隊に課せられた使命は、まさしくその"美味いもの"の確保―宰相ティーラーと皇王シアクヴァヌスⅡ世を捕らえることであった。


捜索を開始してから10分ほどが経過した時、トイレを捜索していた第4分隊員が、一つだけ鍵の閉まった個室があることに気がついた。


隊員「……何故ここだけ鍵が…。分隊長!」

分隊長「どうした」

隊員「この個室だけ鍵がかかっています。恐らく」

分隊長「良し、こじ開けるぞ」


隊長の許可を得た隊員は、鍵の掛かった扉を蹴破った。


ティーラー「ひ、ひいぃぃぃ…」


そこに居たのは、便器にしがみつき、隊員たちに背を向けながらブルブルと体を震わせ怯えきっているティーラーであった。

"相国"らしくはないが、"ティーラー"らしい捕まり方であった。


隊長「フルクファーラント大皇国皇王、シアクヴァヌスⅡ世陛下ですね。我々と御同行願います。」

皇王「余は逃げも隠れもせぬ。しかし…、野蛮人にも礼節と云うものは有るのだな。新たな発見が出来て何よりだ。」

隊長「……護衛を降伏させたのは貴方ですね?必要以上の犠牲を出さぬ様に」

皇王「余は何もしておらん。人数不利を悟ったコヤツらの慧眼よ」

隊長「そういう事にしておきます。02、第4分隊へ連絡。"目標確保。此レヨリ合流スル"」


一方、皇都上空で激しい戦闘を繰り広げる両陣営の艦隊にも、徐々に戦力の差が見え始めてきた。対フルク連合軍の戦術と猛攻により、フルクファーラントの残存兵力は残り僅か…の筈であった。が、

突如として増援が宙域へジャンプし、残存兵力と合流したのだ。

これにより戦力差が一気に覆されようとしていた。


クルーク『アーヘン、クルークだ。ゲルベリウス、艦隊の被害状況は』

ゲルベリウス「現在損耗率37%、敵増援は現在も増加中!」

クルーク『皇都のUD-03に緊急指令を出した。亜空間魚雷の射程圏内まで敵を引きつけろ。我々も間もなくそっちに戻る。あと45分…いや、30分持ちこたえてくれ』

ゲルベリウス「承知しました!」

観測手「レーダー、新たな目標群探知!」

ゲルベリウス「なに!?」

観測手「目標群を航宙機と認!フルク本土から発進した模様!」

通信士「艦長、当該航宙機より入電」

ゲルベリウス「何だと?」

通信士「モニター出します!」

フルクFP『我々は、フルクファーラント"革命"軍』

ゲルベリウス「革命軍だと!?」

パイロット『貴国陸戦隊は宮中制圧を成功させた。既に国家機能は我々が掌握している。我々のIFFコードをそちらに送った。此れより我々も参戦する。』


革命軍の参戦により、敵の指揮系統は混乱。

高威力艦隊、陸海空宙の革命軍、試製航空機隊、そして潜層実験艦隊の総力を結集した奮闘により、度重なる敵増援の到着にも関わらず、強襲艦隊の戦線復帰まで持ち堪えることができたのであった。


通信士「艦長、アーヘンドラッヘより入電!モニターへ回します!」

クルーク『待たせて済まない。強襲艦隊も間もなく到着する。状況はどうか』

ゲルベリウス「第3小隊が宮中制圧を成功させたとの事で、革命派が国家機能を掌握。革命軍による我が方への増援もあり、状況は改善されました。敵増援は打ち止めの様です。」

クルーク『よしわかった。ではプランC-2に従い、挟撃体制へ移行せよ!』


そうして我らは勝った。建国のその時から今日までという、長い長い戦いをついに走り抜けたのだ。その記念すべき日がついに到来したのだ…!


***


フルク本土決戦終結から1週間。

カルラディア帝国最高裁判所大法廷では、ハルキ・ウィンブライ・インザール最高裁判長の下、本戦争の最終的な解決の為の裁判が開かれる事となった。


インザール「戦勝国の権利として、軍事裁判を行う。しかしながら、カルラディアだけでなくフルクファーラントにとっても最大限公平性を保った裁判を執り行う事を誓う」


最高裁判長、ハルキ・ウィンブライ・インザールが軍事裁判開始を宣言する。拘束されているのはフルクファーラントの宰相、クーゲルン・デ・ティーラーであった。

最後の最後まで、もうありもしない権威を振りかざして抵抗を続けるも虚しく、下された判決は「死刑」。彼の行いを省みれば当然のことであった。

命乞いをしているティーラを余所に、保安警察長官から無慈悲な「執行」と言う言葉が放たれた。


"バタン!"という音と同時に、ティーラーの足元の床板が開き、体が宙ぶらりん状態になる。

バタバタと藻掻きながら何とかして逃れようとするものの、次第にその動きも弱くなり「ぐがががが」と、最早言葉にもならない声を上げながらティーラーは息絶えた。

首縄を切り、"ドサリ"と地面に落ちたティーラーの体を、検死官が検死し、死亡が確認され、その場に集まった聴衆やマスメディアに対し、執行完了が宣告され、フルクファーラント大皇国元宰相、クーゲルン・デ・ティーラーの公開処刑は幕を閉じた。


一方、"元"皇王シアクヴァヌスは、ティーラーとはまた少し違った道を歩んでいた。


イルシア「あの…お義父様、私に会いたいと仰られた方は、どなたなのでしょうか?」

クルーク「それはまぁ…、会ってからのお楽しみ……いや、お楽しみと言うのも変な話だな。」

イルシア「(……もしかして)」


長く寂しい時を過ごしたのは、我が国の者たちだけではない。彼らも、また……


イルシア「…!お、お父様!!」

シアクヴァヌス「おぉ、イルシア…。またこうして会える日が来るとは…。」


再会を喜ぶ父娘。自らも父である総統は、この光景に密かに涙を流したとか…。


***


ミナト・マズロア「新たなる時代に」

首脳陣「「「新たなる時代に」」」


ミナト・マズロアの音頭に合わせ、各首脳陣もグラスを掲げ乾杯する。

此度の戦にて剣を振るった勇士たちが、再びショーゲツに顔を揃えた。戦後処理として、参戦国への旧フルク領割譲が取り決められるなどした。

この会談と立食会の成功は、カルラディアの地位を確固たる物にするのと同時に、圧政を敷いてきたフルク一強の時代から、シュリウシアが変わり始めた事の証左に他ならなかった_


***


カルラン暦10年2月22日

この日、ヴィルディア帝都クルクラシアにて、建国10年記念祭が盛大に行われていた。

9年と云う長い月日を戦い抜き、遂に自由を手に入れたカルラディア帝国臣民達は、今日まで無事生き抜けた事、戦いに勝利で幕を閉じる事ができた事実に多いに喜び、正に国を挙げてのお祭り騒ぎとなっていた。


夕刻、閉幕宣言と共にクルークが演説をすると言うことで、総統府前の広場には多くの臣民や各国国営放送などのマスメディアが詰めかけていた。


マイクの電源が入り、会場にハウリングが響き渡ると、聴衆が一瞬のうちに静まり返る。軽く深呼吸をしてから一拍ほど置いて、クルークは聴衆へと、静かに語りかけ始めた_


「…我らはかつて、放浪の民であった。

滅びゆく故郷(ガミラス)を前に、自ら滅びへ向かわんとする者達と袂を分かち、果て無き大海原へと乗り出した。


……あれから、早くも既に十五年。

五年に渉った長く苦しい放浪の末、辿り着いたこの地(シュリウシア)にようやく足を着け、決して十分とは言えぬ小さな力を結集し、一から国を興した。


しかしこの場所でさえ、平穏な土地とは言えなかった…。

圧政を敷く者等によって、我らの汗と血と、涙の結晶は、一夜にして瓦礫の山へと変わり果てた。

あの絶望を、我らは忘れ得ぬだろう…


それでも、我らは前を向いた。

また日が昇り大地を照らす、明日が来ることを信じて。

如何に苦しくとも、我らは上を向いた。

涙を堪え、より大きな世界に理想を求めて。


…そうして掴んだ星々が、いまこの全天に輝いている。

この星々は、多くの犠牲とたゆまぬ努力によって蒔かれた"夢の種"なのだ。

私はこの種を、決して死なせることなく育ててゆかねばならない。


これは、亡きマティウス殿下の遺志でもあった―この広い宇宙、そこに住む全ての人が等しく人であるために―私は殿下の遺志を継ぎ、そして新たな時代を創るため、皆と共にこの夢の種を育ててゆきたい。

そう強く思う。


臣民諸君、それに日々我が下で働く皆。私は君たちには苦労をかけてばかりだ…。本当に申し訳ない。

しかし私は、これからも君たちと共に歩いていきたい。

この十五年間、共にこの帝国を創り上げてきた―夢のような時間もあれば、辛い時も―常に諸君らの力があったからこそやって来られたのだ。


まだまだ先は長い。

私の人生を賭けたこの艦(ふね)に、どうか共に乗艦してほしい!


我らの旅路は、まだ始まったばかりだ__」

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